明日への遺言のレビュー・感想・評価
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映画というかTVドラマ
国際法を無視して虐殺を行ったアメリカ兵を部下に命じて殺させた岡田資の話。
戦後の戦犯裁判でこの処刑の正当性を訴えるが、認められず死刑になる。
ほとんどが裁判のシーンで、映画というよりはTVドラマという感じがした。
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死刑になるのは半分分かっていながら、自分達のやったことの正当性を認めさせたかった。
また自分が死刑でも部下達の命は救おうという思いで頑張った。
岡田資という人物は知らなかったが、軍人としてはとても立派な人だと思う。
興味のない人にとっては単なる退屈な映画ではあるが、藤田まことはハマり役だった。
「報復」ではありません、「処罰」であります
映画「明日への遺言」(小泉堯史監督)から。
俳優の藤田まことさん演じる
戦犯裁判にかけられた東海軍司令官・岡田資(たすく)中将が、
この裁判で、何を言いたかったのか、
また、ここ数日、テレビで「東京大空襲」関連の作品が続いたが、
このタイミングで流す意味は何なのか、
多くのメモを眺ながら、しばらく考えてみた。
無差別爆撃を実行した米軍搭乗員を処刑した罪に問われ、
法廷闘争を「法戦」と名づけ立ち向かう彼の根底にある考えは、
「私が判断し指示したこと(米軍兵の処刑)は
『報復』ではありません、『処罰』であります。」だと感じた。
「誰が爆撃したかなんて問題ではない、何度も重ねたことである」
と、自分に言い聞かせるよう呟いた台詞も心に残った。
死刑の判決を受けた時、法廷を見守る妻に「本望である」と一言。
一つひとつが重たい台詞だったが、是非、観て欲しい作品である。
ナレーションが...
○ナレーション
ゲルニカ(ピカソの絵)から始まり、実写映像とナレーションにより「解説」される構成。「NHKスペシャル見に来たんじゃないんですけど」と言いたくなる。
おまけに、大してうまくもないナレーション。また、ストーリーが進むと岡田中将の妻のナレーションも入り、統一感がない。これなら、最初から最後まで妻の回想のような感じでナレーションしても良かったのではないか。
金払って、TVのような造りは許しがたい。
○経緯
戦略爆撃に関する解説と実写映像から本編への移行も唐突な感が否めない。
B29による爆撃シーン、日本本土の炎上シーン、艦載機による機銃掃射などを織り交ぜナレーションに頼らず、映像で分かるようにしてもらいたかった。また、特に斬首のシーンは実写ではなく、登場人物たちで再現しないと関連性、現実性に乏しい。
昔の戦争映画である、「戦争のはらわた」。これでも実写シーンから映画の戦場シーンと繋がる構成になっていたが、比較して本作では工夫がないと言える。
○全体
冒頭シーンの工夫のなさ、妻以外のナレーションをなかったことにすれば、よくできた映画と考える。特に月明かりの中、死刑執行台に向かうシーンは印象的だった。責任所在について考えさせられる作品だ。重いテーマのため、一人静かに観るのが良いと思われる。
映画であることを放棄した映画
ピカソのゲルニカで幕を開ける。
「映画」はまだ始まらない、戦闘と無差別爆撃という犯罪との違いを解説する。
そのこと自体は必ずしも苦痛にはならなかっただろうと思う。だがナレーションに竹野内豊を起用したことがすべてをぶち壊しにした。
竹野内豊はきらいではない。役柄にもよるが好感を持つほうかもしれない。
だがあのようなナレーションをやるだけの能力は無い。これは彼の問題というよりも、そんな無理をさせた製作サイドの問題であろう。
このオープニングは実に重要だ。
本編に入る前にナレーションと実写とで背景説明を行なう、この手法自体は珍しくもなんともないのだが、おそらくは十分以上に及ぶその長さ。オープニングで語られるその内容もさることながら、この長さがすでにメッセージを有している。
そのメッセージを伝えられるナレーションであれば、だが。
べつに名優を起用せよとは言わない。いや、かえってごく普通のアナウンサーのほうが「声の匿名性」があってよいだろう。とにかくあの長さを、その内容に集中できるよう朗読してくれればよい。
映画の舞台はそのほとんどが法廷であり、ごくわずかに獄中での主人公岡田中将の生活が描かれる。カメラは常に人物から距離を置き、決してその表情を大きく映し出すようなことはしない。
だが時折、なにを血迷ったのか「浪花節」のようなシーンが挿入されてしまうのだ。
最悪であったのが囚人たちの入浴シーン。ひとりが歌い始めた「ふるさと」を、やがてみなが口ずさみ合唱となる・・・・ まさかそんな陳腐な展開にはなるまいと思い続けて観ているだけに、それが現実となるのは悪夢の如し。
悪いことにカメラはやはり人物に寄ることはしないので、感情移入の余地もなければ、かといって完全に醒めた客観的な出来事として捉えているわけでもない、なんとも中途半端な気持ちで眺めているという居心地の悪さ。
いや、その居心地の悪さが狙いであればよいのだが、どうやら描かれているのは人物の心情らしいので困ってしまう。
そう、法廷劇としては緊迫感があり投げかけられる疑問はしっかりと受け止めねばと思うのだが、時折挟み込まれるこうした心象風景がまるでちぐはぐで、映画の流れを乱し観る者の思考を分断し、何を訴えようとしているのかがわからなくなってしまう。
それが作り手の悩みを反映したものならば良かろう。だがどうもそうでは無いように思う。
ナレーションへの竹野内豊の起用、そもそもこれがこの映画全体を象徴しているように感じてしまう。
監督の制御下にはない力が働いていたのではないか。
とってつけたような「浪花節」シーンを入れなければならない、そうでなければ納得しないような外力が存在したのではないか。
もちろんアチキの憶測、妄想の域を出ないが、しかしそうとでも思わない限りこの空中分解したような映画を理解することは出来ない。
伝えるべき内容よりも、その手段たる作品が悲劇となってしまったようだ。
内容が秀逸
ほとんどが裁判所のシーンで構成されているが、それのみで1本作ったというのがまずすごいところ。
あとは藤田まことの演技力、人を引き込む力が素晴らしい。
これにより裁判官、弁護側、連合軍側、被告の気持ちの移り変わりがよく分かる。
たしかに前半は眠くなるかもしれないが、後半からは涙なくして見ることは出来ない。全体としては秀逸と言えると思う。
うーん、イマイチ
ちょっと期待をして観にいきましたが、期待はずれでがっかりしました。後半は多少よくなりましたが、前半の裁判のやりとりが単調で私の前の席の人はいびきをかいて寝ていました。もうちょっとなんとかならなかったんですかねー。
マックィーンの遺言は笑顔。
最近の法廷ドラマで代表的なものといえば、邦画では
「それでもボクはやってない」が思い浮かぶんだけど、
私はあの作品が大好きだ。
ダラダラと続く法廷シーンが主人公の苛立ちと重なり、
イライラエンターテインメントの真髄を見せてくれる(爆)
そして同時に疑われたら最後。の恐ろしさがジワジワと
胸に迫り、女性の私ですらたまったもんじゃなかったxx
ああいう視点で描かれる法廷劇は初めてだったうえ、
あれが通常に下される審判なんだという矛盾を学んだ。
今作は、それとまったく対極にあるような描き方をする。
岡田中将が強く訴えるものをこちら側に強くは訴えない。
藤田まこと演ずる岡田中将の誇り高き生涯を描く作品、
であるからして地味なのは仕方ないとしても、かといって
彼のことをことさら賛美するような描き方もしていない。
ドキュメンタリーほど淡々としていないが感情的でもない。
あ、ナレーションだけは感情的。
抑揚がない、といったらいいのかな…。法廷劇というより、
彼の気高い精神を高々と(そして延々と)語る作品というか。
だったら法廷劇でなく、日常を謳っても良かったのでは。
米国に対する恨み辛みが要所に出てはくるものの、それは
岡田中将の口からは皆無、彼はただひたすら、同じ口調で
同じ回答を繰り返すのみ。「報復」ではなく「処罰」だと。
そして全責任は司令官である自分にあるのだということを。
あまりに理路整然として捉えどころに困る作品なんだけど、
監督が小泉堯史ということで、これで完成となったのかな。
私は藤田まことの偉大な「説教」の元、岡田中将の人間性を
もっともっと観たかったし、画面でも映し出して欲しかった。
当時の日本にこんな毅然とした品格を持つ軍人がいたこと。
戦場での彼、家庭人の彼、周囲に対する配慮は刑務所の
やりとりで分かるけれど、あれで彼のすべてが描けているか。
藤田はさすがの演技力で彼に成り変わっているけれど、
彼を取り巻く世界観が静かすぎ、整い過ぎている気がした。
話は変わるけど、検事役で故・S・マックィーンの息子、
F・マックィーンが熱演している。一応敵役なんだけど…
劇中で彼がチラリと見せる笑顔が、父親とソックリ!で
私はそこに感動してしまった。。
私には彼が、大好きなマックィーンの遺言のようだった。
(戦争における傷み・憎しみ・哀しみは常に平等だと思う私。)
映画 「明日への遺言」 を観ました。
第二次世界大戦終了後、B級戦犯裁判をたった一人で
戦い抜いた岡田資中将の誇り高き生涯を描く感動作。
敗戦直後の混乱の中で自身の責任と信念を貫き通した
岡田中将を、ベテラン藤田まことが熱演する。
小泉堯史監督作品らしく、真摯で重厚な見応えのある
映画でした。
とにかく藤田まことさん演じる岡田資中将の存在感が
圧倒的でした。
ほぼ全編が、岡田資中将のB級戦犯裁判の法廷劇でしたが
無差別爆撃の責任を問うなど、その内容も興味深く、
検事、弁護人、裁判官、そして被告の岡田中将の演技が見事で、
グイグイと引き込まれるのを感じました。
岡田資という人のことは、多少は知っていましたが、
まさに高潔にして、その信念に一点の曇りもない軍人ぶりに
昨今の”品格”、”誇り”が取りざたされる、現代の日本人に
響くものがあることでしょう。
ですが、私は観終わって少々居心地の悪さを感じました。
それは、あまりに岡田資を立派に描き過ぎていて、かつてこれほど
誇り高き日本人がいた、ということに印象が尽きてしまうこと。
房の中においても正座を崩さず、極刑の判決を受けた後ですら
平静を保ち、若い兵士たちを励まし続ける岡田。
一人きりになった時ぐらいは、もう少し苦悩する人間臭い姿を
見せても良かったのではないでしょうか。
日本人の私がこう感じたぐらいですから、欧米の方々は
この岡田の姿にどう思うのか、非常に興味のあるところです。
冒頭に出てきた、戦争の悲惨なニュース映像こそを
しっかりと目に焼き付けておきましょう。
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