Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼のレビュー・感想・評価
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味わい深いシリアルキラー
なかなかユニークな作品だと思う。
通常シリアルキラーものって我々のような凡人には理解しようのない「あちら側」のお話だと思うのだが、依存症となると急に「こちら側」の生々しいリアルな話になってくる。本作品でも主人公ブルックスをサイコと言うよりは依存症として捉えるスタンスのため、殺人を繰り返す男の葛藤や苦悩などを描く事により、ほんの少しだけ殺人鬼の心情に寄り添う形になり、観る側も妙に生々しい「怖さ」をリアルに味わう事になる。
また彼にとって殺人は決して快感などではなく出来るなら本人も辞めたいと思っている、というのもある意味面白い。サイコ野郎って普通は(?)殺人を楽しんでいると思いがちだが、そういう固定概念のハシゴが外される事で物語の展開が途端に読みにくくなる。
怒涛のラストも見事だった。スミス君に殺される事を願いつつ、死ぬのか殺すのかギリギリまで分からない(しかも本人ですら迷っていた)。さらにせっかくスミス君を殺人鬼「サムプリント・キラー」に仕立て上げたのに、事件を追う女刑事アトウッドにわざわざ連絡を入れて縁を切ろうとしないブルックス。そして何より娘ジェーンの殺人願望に気づくブルックスの絶望、そしてラストでは眠っていたはずのジェーンにいきなり首を刺されるというどんでん返し、さらに「ジェーン!」と絶叫して夢から目覚めるブルックス、激しく動揺しながらベッドで「アーメン」と祈りを捧げる。最後の最後まで良心と狂気が激しく入り乱れる展開は、他とはひと味違う面白さだったと思う。
見方によってはどの人物もエピソードも中途半端に描いてるようにも取れなくもないが、僕はこの中途半端さこそがまさに「リアル」であり、結果的に彼らのその後をあれこれ想像してしまう「余韻」としてすごく味わえると感じた。特にサスペンスやスリラーなどでは辻褄が合ってないと冷めてしまう事も良くあるが、時に物語は「完全じゃない方が面白い」という事もあると思うのだ。結局のところブルックスという殺人鬼はあらゆる矛盾を抱えて生きている男だ。なので彼の思考に辻褄など合うわけもなく(犯罪者としては完璧だが)、だからこそ「不完全さ」が逆にリアリティとなり得るし、余白を残してくれる事で観客は観終わった後も味がしてる状態をしばらく楽しむ事が出来る。僕はそういう映画が特に好きなのだ。
とは言え本作品は物語が破綻しないよう実はかなり用意周到に練り上げて作られている事にも気づかされる。所々の伏線がとても重要なのだ。特にブルックスが墓地でスミスに撃たれる際に見せた表情などは鳥肌ものであり、思わず「タクシードライバー」のラストを思い出してしまった。つまりブルックスの殺人願望はいつか止まるのだろうか?という疑問には、あの時の彼の目が「答え」になっていると容易に想像出来る。またジェーンのその後であったりアトウッドとの関係性であったり、観終わってからあれこれ想像するのが何とも味わい深い。
またこの作品ではマーシャル(ウィリアム・ハート)という男(もう一人の自分)を最初から登場させることで話が非常に分かりやすくなり、この作品を正しく導くガイドとして上手く機能していたのではないだろうか。ブルックスという究極の二面性を持つ男を彼の言動だけで描こうとすると説明的過ぎてしまったりするし、そうならないようにすると伏線が多過ぎたり難解になってしまったりと色んな問題が生じると思うのだが、今回の手法はその全てを上手く解決させたと思う。ウィリアム・ハートの役割としては存在感も強烈だったし効果はテキメンだったのではないか。もちろん主人公ブルックスのケビン・コスナーも素晴らしかった。知的で愛情深く、かつ病的なシリアルキラーを絶妙に演じてくれた。
非常に巧妙に作られた作品で、僕的にはなかなかの傑作だと思う。
ずいぶん都合いいな。
Amazonプライムの評判が良いので観てみた。うーん、なんでそんなに評価高いかなぁ?娘が殺人快楽っていうのも無理矢理だし、デミ・ムーアがスミスが怪しいっていうのも無理がある。何かもっと警察とケビンコスナーの頭脳戦みたいのを期待していた。娘は可愛かったけどね🎵
初鑑賞
2024年の初。
なんでこれをチョイスしたんだろ。(笑)
2008年なので16年前か…ケビンがまだ若いわけか。
ブルックスより裏ブルックスのマーシャルの方が不気味だったな〜
ひょいっと出す顔が怖っ!
完全犯罪のシリアルキラーの割には、カーテン開けっ放しとか、脇が甘い。
銃をジップロックに入れたとしても、見つかりそうだけど。
あっさりスミスに脅されるし。
標的のチョイスもイマイチわからなかった。
長年苦しんできたという苦悩についても。
そこがわかればもっとよかったかな。
パパ〜
彼にとって自分の人生や他人の命はそこまで心を揺さぶるものではないという異常性と、1人のパパとして娘の言動に動揺しまくる側面があって不思議でした。
ブルックスという賢くて家族思いの父という人間に「依存症」という特性が備わっているだけなんだなあと、、
冷静で知的な主人公は、たくさん人を殺しているのになぜか好感をもてて、くっついてきてるだけのスミスや娘はなんか気に食わなかったのなんでかな。アホだったからかな。
面白すぎる
殺人鬼が主人公。
イレギュラーを巻き込みながら殺人を続ける。
彼を應慶寺のことを調査し、殺害相手を決める。
問題は彼の娘が彼と同じ「渇き」に飢える人間だということだった。
連続殺人事件は決着するが、同時に娘のことに心が揺れる。
警察から逃げおおせても悪夢は尽きない。
殺人鬼の苦悩
もっと華麗に殺人を楽しむ奴の映画かと思ったら、
ブルックスは殺人の依存に苦しむキャラで、
そこにスミスというおバカさんが登場し
望んでたリアリティーは完全に失われた。
と思われたが、
そこにデミムーアと離婚裁判中の夫、
もう1人の脱獄した殺人鬼、
ブルックスの娘が現れて、
もはやどう転がって行くのか
全く展開が分からず、スミスの登場でつまらないなと
思ってたのにワクワクさせられた。
中盤のスミスとの殺人道中はグダグダだったけど、
ラストに向かって話がまとまって行く最後の20分は見応えがあった。
墓場でのケビンコスナーのブルックスからマーシャルに
変わる?同一化する演技は素晴らしかった。
脱獄した殺人鬼の話と、娘の話がもう少しブルックスに向けて話がまとまってくれるともっとワクワク出来たかもしれない。
デミムーアは久しぶりに見たけど、とても美しく40を超えてると思うのだけど可愛かった。
内なる自分との殺人遊戯
とても興味深い映画でした。
2重人格の殺人依存症の主人公が、犯行現場を写真に撮られ脅される所から始まります。
ただ、脅されはしますが常に主人公が主導権を持っています。
主人公の2重人格の内なる会話を、ケビン・コスナーとウイリアム・ハートがガッチリよつで面白かったです。
ケビン・コスナーが殺人鬼を演じると、品が良く凄惨な感じがしないけど不気味です。
ラスト10分間は、中々の見ものです。
悪魔との契約者
悪魔と契約したんでしょうかね
デスノートのような感じです
全体的に暗い雰囲気のまま進行していきます
終わり方もそんな感じなんだろうと思いました
なぜ殺人鬼になったのかは観た人の考えに任せるんでしょう
もっと悪いヤツでも良かったのでは?!
良き父良き夫で、事業にも成功している実業家が、実は殺人鬼というもの。
前半は、うまくストーリーが運び、後半に期待が高まるが、中だるみしてしまう。
それを補うかのように、意外な事実が浮かび上がるが、結末は良くなかった。
ケビン・コスナー演じるMr.ブルックスの苦悩があまり感じられなかったのが残念。
もう一人の自分の悪魔(ウィリアム・ハート)に、そそのかされるとすぐに応じてしまったり、
「楽しんで殺人鬼になっているのではなくて、依存症なんだ」というのなら、その経緯を描いてほしかったな。
せっかくのデミ・ムーアとケビン・コスナーとの絡みのシーンもなく、もったいない。
ラストは、「おぉ~~!!」こうきたか!と思ったものの、夢オチとは残念。
驚きのままで良かったのではないかな。
暗い
ケビンコスナーの作品観るのホント久し振り。相変わらず上手いです。しかも今回の役所になりきっちゃってますから観るもんも入りやすいです。
この作品の凄さはズバリ完全犯罪。一切証拠などは残さず殺人をやり遂げます。ケビンコスナーの静かな殺人シーンには何か日常的に当たり前だと思わせてくれるとこが怖い。ある殺人をやり遂げた後、ある奴に写真を撮られそいつと行動するのですがまたこいつも暗くてかなり変奴。デミームーアが刑事役で出てますが、こちらの演技、存在力もありで濃い味になるのかと思えばさすがは両者薄味で上手いです。
心の葛藤をもっと上手く観せてくれればスコア上がるのですが、こんなもんです。暗くて静かな殺人映画です。
二面性を秘めたブルックスの人物像にカリスマ性と説得力が吹き込ませた、コスナーの演技がとにかく良かったです。
家族思いの実業家にして、残忍な連続殺人鬼。
完全悪役に初挑戦するケビン・コスナーがこれまで演じた役の中でも複雑で多面的な層を持つキャラクターに挑むサスペンス作品です。
ラストの連続どんでん返しで『ミスト』に続きイヤな終わり方をまた見せつけられるのかと思いきや、1回捻りがあり、結末は本当に意外なものになりました。これなら続編も楽しみです。話題の『ミスト』よりも面白いと思いました。
いまハリウッドはサイコ・スリラーが人気ジャンルになっていて、風貌の不気味さや性格の残忍さばかりを強調したステレオタイプな連続殺人鬼を生み出しています。けれどもこの作品のアール・ブルックスは、心優しきファミリーマンにして切れ者の実業家。どこからどう見ても理想的なナイスガイが、倒錯的な欲望に駆られて凶行を繰り返す殺人中毒のシリアルキラーだという設定なんです。
殺す方法も、ガンで即し。サイコ・スリラーにしては殺しの場面で、過剰な恐怖感を煽らないのです。ブルックスをコスナー演じることで、むしろクールでかっこいいという感じすらしました。
『ソウ』シリーズや『ゾディアック』といった近年話題のスリラーを例に出すまでもなく、殺人鬼は闇の中に隠れ潜むというのが常識だが、ブルックスは堂々とハンサムな顔をさらし、セレブリティとして悠々自適の社会生活を送っている点が、これまでの作品と大きく異なるところです。やはりこの男を興味深い人物にしているのは、通常ならば殺人鬼の心の中には見えない“良心”を持っているからだと思います。
それとこの作品のキイポイントは、ブルックスの分身“マーシャル”の存在です。統合失調症にかかったみたいにブルックスの幻影としてつきまとう“マーシャル”は、彼のなかの邪悪な欲望の代弁者として、彼に殺人をそそのかすのです。
そんな彼のなかの二面性を、完全に独立した別人格として、描いているところも特異な点です。マーシャルの存在により、殺人異存症から抜け出せないブルックスの性癖が、観客にも分かりやすく伝えることに成功しています。
さらにストーリーも巧みな筆致で、ブルックスの内面に見事に食い込んで行きました。 ただ残酷に人が殺されていくのでなく、合間に依存症患者の集まりに出席し、懺悔することで殺人依存症からの脱却を試みているシーン。そして、どんなに人を殺したあとでも、神に許しを請い続ける善人であり続けよう語らせるシーンを入れることで、彼の内面の苦悩を見せるのと同時に観客にホットさせて、次のシーンに集中させる効果を生んでいます。
加えて、伏線の張り方も凝っており、ストーリーはブルックスの殺人だけでなく、彼を追う熱血刑事アトウッドにも、彼女がかつて逮捕した殺人鬼が付け狙っていたり、彼女の離婚訴訟中の夫がブルックスのターゲットになったり、複雑に絡み合っていきます。
またブルックスの娘ジェインにも、殺人の容疑がかかったりします。後半ジェインが自分の血を引いて、殺人鬼となりはしないか、ブルックスは恐れるのですが、それがラストの重要な伏線となりますので、乞うご期待!
究極の二面性を秘めたブルックスの人物像に思いもよらないカリスマ性と説得力が吹き込ませた、コスナーの演技がとにかく良かったです。
そして、コスナーが共演を熱望した名優ウィリアム・ハートは、“マーシャル”という幻影が持つ、人の持つエゴと嫌みな感情を、これでもかとブルックスにぶつけて印象的でした。
映画『ミスト』を見て、良かったと思う人にお勧めします。
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