「マジックは時に人を生かし、時に人を殺す」プレステージ 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
マジックは時に人を生かし、時に人を殺す
19世紀末のロンドンが舞台のマジシャン対決。
マジシャン対決といっても、そんなぬるいモンじゃありません。
指2本失くすわ、人前でハト殺させるわ、ショーを台無しにして赤っ恥かかせるわ。
やられたらやり返す、妻を失ったアンジャーの壮大な復讐劇の行方とは…?
ノーランらしい、難解で想像以上に深い歴史SF(と呼んで良いのか分かりませんが)でした。
(静かな)暴力映画だと思うんですが、妻や娘への愛を入れてくるあたりも実に彼らしい。
とにかく初見ではストーリーを追うのに一苦労でした。
この手の映画はもう一回観て、伏線とか探しながら味わいたい。
そして、テスラ(まさかのデヴィッド・ボウイ)VSエジソンが絡んで来ることで一気に増す現実感。
物語のキーとなる例の機械のファンタジー要素で賛否が分かれそうですが、私は好きです。
マジックには三段階。
プレッジ(確認)、ターン(展開)、プレステージ(偉業)。
プレッジでなんでもないものを見せ、ターンでそのなんでもないものを使って凄いことをしてみせる。
そしてプレステージが肝心で、ここにより観客の拍手が起きる。
この映画自体も重要なシーンは全て前半冒頭にまとまっていた。
我々観客はそれに気づかず、次々と起きていく事件を見せられ、あっと言わされるラストでの種明かし。
この映画こそがマジック。
満足できる充実した130分。
前後する時間軸の中で、一体なんだったのか、そんな“なんでもない”ことだったのか、と喪失感に襲われる手品的映画。
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