大統領の陰謀のレビュー・感想・評価
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硬派でクールな社会派サスペンスの傑作
1972年〜1974年に掛けて発生した“ウォーターゲート事件”を題材に、ワシントン・ポストの2人の記者が事件の真相に迫って行く過程を描く社会派ドラマ。事件を追う2人の記者に、ダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォード。監督は『パララックス・ビュー』(1974)、『ペリカン文書』(1993)のアラン・J・パクラ。脚本は『明日に向って撃て!』(1969)、『ミザリー』(1990)のウィリアム・ゴールドマン。
1972年6月17日。大統領選の最中に民主党本部への不法侵入事件が発生。実行犯として逮捕された5人の素性は、CIAの工作員だった。ワシントン・ポストの新米記者ウッドワード(ロバート・レッドフォード)は、事件に興味を持ち調査を開始。やがて、先輩記者のバーンスタイン(ダスティン・ホフマン)と協力し、彼らはホワイトハウスに繋がる陰謀を明るみにしていく。
事件を追う2人の記者や上司に至るまで、実際の人物名が用いられ、事件を追う2人の私生活や信条を語らず、あくまで彼らがどういった手段で真実を明るみにしていくかを描いており、さながらドキュメンタリーを観ているかのようだった。パソコンもスマートフォンも無い時代、電話と自らの足による地道な取材や、発言をメモして裏付けを取る姿勢、匿名を約束して事件の関係者から情報を引き出そうとする執念の取材の泥臭さが良い。
主演のダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードの演技は勿論、ワシントン・ポストの主幹ブラッドリー役のジェイソン・ロバーズも良い。最初は事件の裏付けが弱いとしながらも、終盤では「彼らを見捨てるな」と、報道の自由を胸に若い記者を信頼する姿が渋い。
カメラワークが素晴らしく、国会図書館で貸し出しカードを手作業でひたすら調べていくウッドワードとバーンスタインを真上から捉えたショットのキレが抜群。次第に高度を増し、図書館全体を見渡せるようになっていく様が、彼らの作業の途方もなさを表している。
中盤、執念の取材にも関わらず、大統領選に圧勝するニクソンの姿を映したテレビ画面と、オフィスでタイプライターを打ち続けるウッドワードの対比も良い。画面の7割を占めようかというテレビ画面と、その隅で仕事に励むウッドワード。まだこの時点では、ホワイトハウスが優勢。
しかし、ラストで事件の黒幕を世間に暴き、生命の危険すら覚悟の上で、尚も記事を書き続けるウッドワードとバーンスタインを捉えたシーンでは、テレビ画面に映る大統領就任式のニクソンの方が端に追いやられている。高らかに宣誓するニクソンの姿は、その後タイプライターの文字で語られる事件終結までの経緯を含めるとあまりにも皮肉。
“ディープ・スロート”からの警告を受けたウッドワードが、バーンスタインの自宅を訪ねた際、盗聴と監視を恐れてタイプライターで会話するシーンが印象的。彼らの記者としての戦い方を端的に表している。
そして、ラストでタイプライターの打刻によって語られる事件のその後の展開。ウッドワードとバーンスタインの勝利を告げる静かなラストが非常にクール。
ドキュメンタリーさながらの硬派でスタイリッシュなタッチによって、社会派サスペンスの名作として評価されるのも納得の一作。また、ブラッドリーをトム・ハンクスが演じた、本作の直前の事件を描いた『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2018)を見返したくなった。
日本人には退屈
地道にコツコツと。
緻密で完成度の高い名作。登場人物は多いが派手なアクションは皆無。ともすれば置いてかれるだけの退屈な映画になりかねないところを、アラン・J・パクラの堅実な演出とゴードン・ウィリスの闇に浮かび上がる美しい撮影、そして主演2人の熱演に支えられ、ヒリヒリとした緊張感漂う格調高いポリティカルサスペンスに仕上がってます。
セットも違和感無いし、ジェイソン・ロバーズの存在感も素晴らしい。特大スクープの裏には、途方も無く地道で粘り強い取材や調査、そして確かなチームワークがあり、あらゆる仕事に言えることだなと鑑賞するたびに再認識させられます。仕事でゴールが見えなくなったり迷ったりした時は、本作を観るようにしてます。
【”二人を見捨てるな。守るべきは憲法修正第一条、と編集主幹はワシントンポスト記者たちに言った。”今作は余りにも有名なウォーターゲート事件の実写化であり、ジャーナリストの執念を描いた作品でもある。】
ー 今作では、派手なカーチェイスや銃撃戦などは一切登場しない。描かれるのは入社して僅かのボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)と先輩記者カール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)が執拗なまでに、民主党本部オフィスに侵入した男5人に関係しそうな人たちに取材する姿である。
或る時は、ほぼ一日待合室で待たされ、或る時は取材を拒否される。だが、社の女性の元交際相手がニクソン再選委員会メンバーと知れば彼女からメンバーリストを手に入れ、只管に取材をし、タイプライターで記事を打ち続けるのである。
そして、徐々にニクソン大統領の右腕であった”ホールドマン”が全てに関わっていた事を突き止めて行くのである。
今作が、ジャーナリスト映画として優れているのは、ワシントンポスト紙の編集主幹だったベン・ブラッドリー(ジェイソン・ロバーズ)の部下を信じ、後押しする姿であろう。
彼が劇中に言う””二人を見捨てるな。””守るべきは憲法修正第一条”という言葉からもそれが伺えるし、ジャーナリスト魂が伝わって来るからである。
”ディープ・スロート”がボブ・ウッドワード記者に情報を流すシーンの演出も効果的である。
<冒頭とラストのシークエンスの連動性や、ラストのニクソン大統領が再選を果たした実演像が流れる中、タイプライターの文字でウォーターゲート事件に関わった人達に有罪が下った事がテロップで流され、ニクソン大統領が史上初めて現職大統領で就任中に辞任した事が最期にテロップで流れて、エンドと言う終わり方も非情に秀逸である。>
名作
もし、このふたりの記者がいなかったら、、、
まずは二人の演技力
引き込まれる
大局を見失うな
ワシントン・ポスト紙の新米記者ウッドワードをロバート・レッドフォードが、同僚のベテラン記者バーンスタインをダスティン・ホフマンが演じる。
次々と関係者に電話で取材を進めるウッドワードのアップ( 画面全体の半分位 )映像が続いたが、自然体で演じるロバート・レッドフォードは、なかなかに魅力的でした(笑)
新聞記者視点で描かれており、スリリングな展開にラスト迄引き込まれた。
NHK-BSを録画にて鑑賞 (字幕版)
アラン・J・パクラ監督作品の再鑑賞が楽しみになった
スピルバーグ監督の
「ペンタゴン・ペーパーズ」を観た時に、
トム・ハンクスの演じた編集主幹は
この作品のジェイソン・ロバーズが演じた
同一人物と知り、
そのベン・ブラッドリーに注目して
鑑賞を始めた。
ロバーズはこの作品で
アカデミー助演男優賞を受賞した位だから
名演技なのだろうが、
しかし、そんな比較の目論見も、
主人公二人のたたき込むような
緊張感溢れる場面の連続に、
そんな思いなど
すぐにどこかに飛んでいってしまった。
話の中で社主の名前が出て来た時に
メリル・ストリープの顔が浮かんだのは
ご愛嬌だったが、
しかし、「ペンタゴン…」に続いて
字幕に出てくるたくさんの名前の人物が
誰が誰やら分からないままに話は進む。
でも何とか想像を巡らせ、
それほど的外れでもないだろうとの
認識の中で、興味深く鑑賞が出来た。
今回の鑑賞で生じた最大の謎は、
冒頭のタイトルバックでの
主役の2人の扱いだった。
ディープ・スロートとの関係や
画面に登場している尺を考えると、
レッドフォードが一番目か、
せめて両名併記ではないのかと思ったが、
レッドフォードが制作に絡んでいる
と知って、
彼はホフマンを招く立場だったからだろう
と想像したが、どうだろうか。
さて、この映画では
ニクソン辞任への布石までを描くだけで、
辞任の結末までは
タイプライターだけで印象的に描いた。
それは、二人の濃密な取材行動だけに
徹した演出のためでもあり、
素晴らしい構成に思えた。
パクラ監督の「ソフィーの選択」は
私にとって絶対的に大切な作品だが、
あまり演出を意識することはなかった。
しかし、この作品を観て、
「ソフィー…」の監督力確認も含め、
改めて他のパクラ作品の再鑑賞が
楽しみになった。
記者生命をかけた執念の聞き込み
ウォーターゲート事件
ニクソン大統領を辞職に追い込んだ、ウォーターゲート事件を執拗に追い続け、スクープをモノにしたワシントン・ポストの記者二人が主人公(ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード)。
フェイクニュースが取り沙汰される現代、今は昔感が強い。
新聞記者になりたい! と思ってしまう映画。
大統領の陰謀を観て、「新聞記者ってカッコイイ!」と思った人は多いのではないだろうか。 かくいう私もその一人。 20代の頃、専門新聞の記者として働いたのは、学生時代に観たこの作品の印象が強烈だったからだ。
あの感動から40年。 BSで放送されたのを久しぶりに鑑賞。 実際の新聞記者が全然カッコよくないことを知っている私だが、やはり、主役の二人の仕事っぷりは羨ましいほどに輝いて見えた。 やり方次第では、カッコよくない仕事でもカッコよくなるのだ。 その点は、反省せねばなるまい。
作品の構成は、ウォーターゲート事件の調査報道の顛末を忠実に描いており、 記者二人の人物像やプライベートは一切省かれた作りになっている。 物語は、スクープを掴んだ若い記者二人の「主体性に満ちた行動」を追う形で進行する。 明確な目的へ向かって突き進む人間の姿は生理的に心地よく、観る者の意識を強力に惹きつける。 私が昔カッコイイ! と感じたのは、まさにこの部分である。 二人の記者の手記を元にして作られたということだが、ドキュメンタリータッチといってもいい脚本、そして監督の演出ともに、見事な出来栄えだ。
社会派ドラマの堅苦しさを感じないのは、前線で取材をする二人の記者が、ことさらに正義を主張したりしないからだろう。 二人は、ただひたすら仕事に没頭する若者という印象だ。 権力の腐敗を暴くジャーナリズムの使命感を象徴するのは、彼らをバックアップする編集主幹の上司。 「責任は俺が負う。お前らは何も心配せず思い切ってやれ!」と劇中で言ったわけではないが、まさにそんな理想の上司なのである。 この編集主幹役を演じたジェイソン・ロバーズは、アカデミー助演男優賞を受賞した。 演技の良さだけでなく、アメリカにおけるジャーナリズムの地位と価値が反映された評価という気がする。
アメリカは、多くの複雑で深刻な問題を抱えた国だが、自由と正義を守ろうとする意識も強く、善と悪を拮抗させるそのバランス力こそが国力の源泉なのではないかと思う。 だからこそ、こういう躍動感に満ちた作品が生まれるに違いない。
私も、そんなアメリカで新聞記者になっていたら、もっとカッコよくなっていたかもしれない。
いや、訂正する。
それはないだろう。
煩雑なシナリオ
カタカナの名前がいっぱい出てくる
次期大統領選のためニクソン大統領が対立する党に盗聴器をしかけようとしたウォーターゲート事件を暴こうと奮闘する記者たちの話。
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この映画が公開された時はウォーターゲート事件がかなり直近で話題になってた時らしいから何も知識がないと全く訳が分からない。
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普通に顔もわからないカタカナの名前の人が大量に出てくるから、誰やねんってなるし、あいつの仕業か!とか言われても全くピンと来ない。
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でもこの映画、事件を追うというより、インターネットのない時代、記者たちが地道に情報収集をしていくところを見る方が目玉なのかな。まぁ盛り上がりはあんま無いけど。
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図書館の貸出書を1枚1枚確認したり、関係者全員の家に訪問したり、かなり無駄が多い。今は便利な時代だね。
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最近の映画だったら『ペンタゴン・ペーパーズ』とか『記者たち』に似てる。『ペンタゴン・ペーパーズ』って確かウォーターゲート事件で最後終わった気がするから続きとしても見れる。
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邦題に微妙な悪意…
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