第3逃亡者のレビュー・感想・評価
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ラブサスペンス寄り
黒塗りの顔チックのドラマーが有名なお話です。特にホテルの俯瞰からチック男のアップまでカメラが寄ってゆく演出は極めつけです。 この辺りから後年のヒッチ節が確立しつつありますが、この作品はラブロマンス要素が濃厚です
【”瞬きの果て・・。”初期、ヒチコック作品の巻き込まれ型サスペンスの佳品。】
■ある日、女優のクリスティン・クレイが遺体で発見される。 殺人の容疑者とされたのは、彼女の知り合いでもある第一発見者のロバートだった。 身に覚えのない彼は裁判所から逃走。偶然知り合った警察署長の娘エリカとともに、無実の証拠となるコートを探すが…。 ◆感想 ・初期、イギリスでのヒッチコック作品でもあるが、脚本を彼は手掛けていない。その故か、真犯人のガイの殺意の動機が衝動的であったことが、やや残念である。 ・ロバートとエリカが真犯人を追う為に、ロバートが亡くしたコートを見つけるも(コートのベルトでクリスティン・クレイは殺害されている)コートのポケットにグランドホテルのマッチがある事に気付き・・。 <無実の男が逃亡しながら真犯人を探すという、アルフレッド・ヒッチコック監督お得意の巻き込まれ型サスペンス。ユーモアをちりばめつつ緊迫感を高める巧みな演出が光る作品。>
きっと誰もが、ファースト・シーンを観直すことでしょう!!
ラストシーンを観終わって、最初のシーンを観ました。
やはり男は、まばたきを2度、3度と繰り返していました。
1937年。イギリス時代のヒッチコック監督作品です。
ヒッチコックお得意の「巻き込まれ型スリラー」
そしてラブコメ要素のあるサスペンスです。
ふと思ったんですが、チャップリンのサイレント映画を偲ばせるシーンが
チラホラとあります。
主人公のロバート(犯人の嫌疑をかけられる青年)が失神するシーン。
警察署長の娘エリカは介抱に飛んできて、頬っぺたを引っ叩くやら、耳を引っ張るやら、
過剰に介抱(笑)
エリカは介抱好きなのか、ラストで失神した犯人も介抱に駆けつけます。
ロバートがオデコを怪我した時も、エリカは家外の水道の蛇口から水をかけて洗うのですが、
蛇口の水の蛇口が上を向いてて、強くひねるとものすごい勢いで上に跳ねてロバートは
めちゃくちゃ水浸し。
このシーンも過剰な位に水が跳ねます、何回も何回も。
そして犯人の顔を知る男ウィル。
ラストのボールルームのシーン。
ウィルは暇を持て余して、エリカとダンスをします。
その足の動き・・・チャップリンの足みたいに足を上げ下げして笑わせてくれます。
たった84分の映画なので、多少説明不足かしら?
ファーストシーンに犯人の顔はバッチリと写ります。
男はホテルの部屋のバルコニーから下を覗きます。
下は黒々した海水が濁流のようにうねっています。
ここで私は殺害した犯人は、クリスチーヌ(女優)をベランダから投げ落としたか?と、
思ったのですが、これは多分違います。
死体はビーチに海水帽子をかぶり水着を着て横たわっています。
たしかに死体は水を被っていますが、朝早くに運んで水際に置かれたのだと思われます。
死体の脇には絞殺に使ったらしいベルトがご丁寧に置かれている。
(これも死体と一緒に投げ込まれたのなら、こんな近くに落ちてる筈がありません)
その結果、ベルトの持ち主と思われる第一発見者のロバートが疑われるのですが、
さて第一容疑者にされたロバート。
(本来ならホテルにクリスチーヌと一緒にいた夫が一番に疑われるはずなのでは)
それでロバートは盗まれたコートとベルトを必死に探します。
犯人は殺人の事前にロバートに罪を着せるために、ロバートのコートを盗み、そこからベルトを奪い
殺害時にわざわざベルトを使用したことになります。
(犯人はクリスチーヌ殺害計画をかなり以前から、計画していたことになります)
でも、そんなことをウジウジと重箱の隅をつつくのは野暮と言うもの。
次々と迫るピンチをエリカとロバートは、鮮やかにクリアして行きます。
空き家に隠れるロバートにサンドイッチを差し入れしたり、お金を返したり、
追って来た警官を巻いて、さらに逃走。
古い炭鉱の大きな穴に、車ごと落っこちるスペクタルなシーンも、見どころです。
エリカとロバートが次第に心を通わせ意識し合う様子も、ほのぼのとして楽しい。
そしてウィルが面通しするために3人で訪れるホテルのボールルーム。
ここでのワンシーン・ワンカットはこの映画の名物シーンです。
広いボールルームをとらえたロングから、舞台で演奏する顔を黒塗りしたドラマーの、
まばたきする目のクローズ・アップまでを、ワンショットで寄るクレーン撮影の効果。
今ではワンカット・ワンシーンと歌われる映画は多いけれど、そう見せかけてる事が多い。
ヒッチコックは1937年には、正真正銘のワンカット・ワンシーンを実践してるのですね。
息詰まる緊迫感が、演出されています。
コメディ色の強い楽しいラブコメ風のサスペンス映画。
ロバート役の青年がなかなかの美形でしたね。
中型犬とヒッチコックも出演して、後味最高ですね。?
ヒッチコック隠れた名作
まず何といってもこの作品は脚本が優れている。犯人と間違われる主人公から始まり(それはその後ヒッチコックのパターンになる)その主人公に関わる第二の主人公との出会い、第一の主人公と第二の主人公に主人公が入れ替わっていく流れのうまさ。ミステリーそのものは無実の証拠となるコートを探しに行くただそれだけに留め、主人公の心の移り変わりに重点を置いた作劇となっている。また主人公がピンチに陥る場面が散りばめられ最初から最後まで退屈することがない。主人公が追い詰められるシーンと言うと兎角警察や真犯人に取り囲まれるシーンにばかりなりがちだがヒッチコックは一味違う。一見すると大したピンチではなく、強引に振り切れば簡単に逃げ切れそうなシチュエーションに見えて実はそれができず、余裕がありそうで実は追い詰められている。ヒッチコックはそういうのが好みでこの後色々な映画で、そういうシチュエーションを取り入れているがこの映画のシーンが一番決まっている。
この映画を面白くしているのは脚本のほかに、主人公がいかにも純情そうでシチュエーションにハマる役にピッタリ合っている。顔つきは目が離れていてでこが広くてスタイルがよく、後のグレイス・ケリーを彷彿とさせる。
さていよいよ本題に入ろう。この映画が始まってすぐに思ったことは、「あ、ピンボケしている」であって、残念ながら最後までピンボケしている。次に気が付いたのは固定カメラの多さだ。ヒッチコックはカメラを動かすのが好きな監督で、実にカメラをぐるぐる回すシーンが多い。がこの映画は、待てど暮らせどカメラが動かない。たまに控えめにパンする程度だ。私はこの映画がヒッチコックの初期作品
だから、そうなのかと思いつつ見ていた。そしてクライマックスに来て遂に、その意図に驚かされるのである。「あ、それクレーンのことですね?」あなたはそう言うだろう。しかし私はあえて違うと言ってみたい。それまで固定カメラを使っていた効果が出ているのは、主人公がホテルのコンサートホールに入って行くシーンである。ここで初めてカメラが本格的に動くのだ。カメラが主人公フォローする。ただ普通に歩いている速度であるにも関わらずこの移動の効果は絶大だ。「キタキタキタキター!!クライマックスにキター!」という雰囲気が出るのである。その後、例のクレーン撮影となる。ここで重要なのはまばたきだ。我々はどの男が瞬きをするのか、息を呑んで見ている。カメラがやがて一人の男を捉える。まばたきしない。バストアップになる。まだしない。クロスアップになる。まだしない。この男ではないのか?犯人はここにはいないのか…。遂に目のクロスアップになる。まだしない…と,思った次の瞬間!
この作品は何もかも上手くいっている。ヒッチコック会心の作品であると思う。ただ最後に残念な点にも触れておかなければならない。それはラストの主人公のクロスアップだ。ここでは最高に可愛く撮ってあげなければならないのだが、可哀相に老け顔になってしまっている。多分撮影が過密スケジュールだったのだろう。
典型的なヒッチコック作品
スタイルが確立されていて、現代の目から遡って観るとあたかも構成要素を嵌め込み式にして製作されたかのように感じてしまうほど典型的な作品 実質的な主人公は署長の娘エリカ 無実の罪で追われるロバートは狂言回しに過ぎない エリカ役の女優が初々しく処女性を発散している上に知的で細く美しい 正にヒッチコックが好む女優の典型 彼女の母はほとんど登場せず、中年体型の叔母さんは長く映すことによってエリカをより美しく若く細いことを対比で際立たせてみせる しかも彼女は身長が低く庇護を与えたい欲求を喚起するような配役だ そこに勇敢な飼い犬を彼女に寄り添わせて、彼女の冒険の勇気に説得力を添えている 題名の第三逃亡者とは ロバートとエリカ、そして三人目の真犯人を指す だが、原題の「若さと無邪気」の方がお話の内容を的確に表現していると思える 戦前の日本の宣伝マンはそれよりもサスペンスを訴求したかったのだろう 終盤のグランホテルのロビーからレストランまでをクレーン撮影で俯瞰して真犯人の居場所を登場人物より先に観客に提示する手法は見事なシーン 全体から核心に一気に近付いていくショットは、その後のヒッチコック作品でも多用されていく レストランで演奏するバンドメンバーが黒人を模して顔を黒く、口の周りを赤く塗っている 現代では人種差別だと糾弾されるメイクだ この時代は何も問題意識がなかった しかし現代の目からこの映像をみると、やはり漫画的にデフォルメしてあり無意識の差別意識が働いていると言われてもしかたが無いことがわかる
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