「スパイスの効いたおとぎ話 面白い!!」レミーのおいしいレストラン うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
スパイスの効いたおとぎ話 面白い!!
いったいどんな経緯でこんな風変わりな映画を、いやストーリーを考えついたのか。ネズミたちは、あくまでネズミらしく振る舞うし、滑稽でそして可愛くない。むしろ気持ち悪い。キッチンに彼らが往来する絵ずらが苦手な人は、きっと受け付けない作品だろう。もしかしたら、吐き気を催す人もいるかもしれない。
それにしても、味を表現する手法はいちいち感心させられる。実写作品でも、料理が美味しそうに見えないことが多いのに、CGアニメーションで、ここまで料理を魅力的に見せる映画は前例がないんじゃないだろうか。
とくに、評論家がラタトゥイユをひと口食べた時の感動は、本物の料理を食べる以上に感動した。例えが適切かどうか知らないが、本当にキスするより、魅力的なキスシーンを見ていたほうが気持ちよさそうに感じる、ようなものか。
この映画が素晴らしいのは、リングイニ青年が成長するだけの、ただの立身出世伝ではなく、最終的に評価を受けるのが料理を作ったネズミだということだ。そこにあるのは絶対的な評価。美味しいものは、たとえ誰が作っても美味しいという評価を、批評家のルーティンでの仕事を超越して、神聖なるものとしてきちんと評価し、人々もそれを受け入れる。
批評家が絶賛したから店が繁盛し、酷評したから店がつぶれるという、ありがちなテーゼを、あえて真正面から取り上げ、美味しいものは絶対的に美味しい。批評家も勿論ほめたたえ、店も繁盛する、という、映画としてはあり得ないアプローチを試みていることも画期的だ。
考えてみれば、ミッキーもネズミだった。ディズニーピクサー作品としては、まあ、あってもおかしくない映画か。でも、ミッキーはマウスで小型のネズミ。レミーはラットで大型のネズミ。レビューは好意的な評価が多いのに、続編のウワサを聞かないのはなぜなのだろう。
まだまだ、見たことがない、いい映画はたくさんあるのだ。