「彼のように生きたかった」レミーのおいしいレストラン 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
彼のように生きたかった
この映画は何度も見てるけど...正直告白すると...見る度に100%、最後のアントン・イーゴの評論で泣いている。
この物語はレミーの才能とチャンスの物語だ。
よくアニメや漫画の評価基準として「結局才能があるから主人公がのしあがる作品はクソ」という声が上がる(特にジャンプ系)。しかし、全ての才能ある人が成功をものに出来るかは別だ。
レミーにはそこら辺の人間をはるかに凌ぐ才能があるが、その才能をさらに凌ぐハンデを背負って産まれた。人間界のカルチャーに憧れを持ちながら、人間界から無条件で敵とみなされる動物なのだ。
「いやいや、結局味方は多いし家族の理解も得てるじゃん、結果から見たらコイツ恵まれてるじゃねえか」と切りたくなる気持ちも分かる。でもレミーはセンス以上に、常に前に進む勇気がある。めちゃくちゃ泥臭い失敗もするが、そこで折れない図太さひたむきさもある。ハッキリ言うが、その界隈でのマイノリティが人目を気にせず前に進むのはメチャメチャこわい。味方も家族の理解も、全部レミーが「行動で勝ち取った」ものだ。だから僕は彼をメチャメチャ尊敬する。
いま、これを読んでくれているあなたが今の仕事、境遇に納得して生きていられるなら幸いだ。だが恐らく、世の中の大半の人は望まざるゴールに行き着いていると思う。振り返ればたしかに分岐のチャンスがあったのにも関わらず。
意見を忖度してたらしたくない選択をさせられてしまった。人目を気にしてたら嘘っぽい自分を演じ続ける羽目になってしまった。人付き合いの訓練が足りないばかりに誰かを裏切ってしまった。こんな失敗談はそこらじゅうに溢れてる話だ。
いつも歳をとった自分を重ねて思う。あの時レミーのように前に進めていたらと。
この映画の体裁はキッズ/ファミリー向けだ。正直髪の毛をコントローラーにして男を操縦するというアイデアは荒唐無稽だし(ピクサーというよりピクサーのパチモン映画にありそうだ)ご都合シーンが絶無なわけではない。それでもこの映画のメッセージは錆びつかないし、歳を取ればとるほどに刺さる。それは僕が掴めなかった、夢を的確に掴む、そこにスポットを真っ直ぐに当てたお話だから。