ホテル・ルワンダ : 映画評論・批評
2006年1月10日更新
2006年1月14日よりシアターN渋谷ほかにてロードショー
抑制の利いた演出とドン・チードルの演技が胸を打つ
マウンテンゴリラの棲息地として名高いアフリカの小国ルワンダで、1994年、長年くすぶっていた民族対立(フツ族×ツチ族)の火種がついに爆発! 100万人(国民の10%)を超える犠牲者を出した大虐殺に発展した。
テリー・ジョージ監督(「父の祈りを」の脚本家)によるこの物語は、主人公のホテルの副支配人(ドン・チードル)の身の回りの出来事として、たった10年前に起こった、国連が平和維持軍を派遣しながらも無力に終わった「国連最大の汚点」としてのむごたらしい史実をじっくりと検証する。彼は、オスカー・シンドラーよろしく、最大限のコネを使って自分の身内を救おうとし、結局は殺される運命にあったツチ族1200人の命を救う。
目を背けたくなるような大虐殺の惨状を直接突きつけるわけでなく、抑制の利いた演出に徹しているからこそ、この事実を真摯に受け止めたくなる。黒い肌の虐殺者たちの目を異常に光らせ、あるいは累々と横たわる死体の山をシュールレアリスティックに見せつつ、主人公が味わう心理的な恐怖を少しずつ少しずつ積み上げていく話術が素晴らしい。
絶望の淵にいる苛酷な宿命を阿鼻叫喚もなしで全身で体現する主人公役ドン・チードルなしに、この感動は生まれなかっただろう!
(サトウムツオ)