ボーン・コレクターのレビュー・感想・評価
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【77.6】ボーン・コレクター 映画レビュー
フィリップ・ノイス監督作品『ボーン・コレクター』は、ジェフリー・ディーヴァーの同名小説を原作とするサイコ・スリラーである。四肢麻痺の天才科学捜査官リンカーン・ライムと若き女性警官アメリア・サックスが、猟奇的な連続殺人犯“ボーン・コレクター”を追う物語。その設定の斬新さと、主演二人の演技が織りなす化学反応は、公開当時から高い評価を受け、現代においてもカルト的な人気を誇る。
作品の完成度
本作の完成度は、その独創的な設定と、それを最大限に活かしたサスペンス構築に依拠する。寝たきりの天才が、現場に直接赴くことのできない自らの手足となりうる若手刑事を遠隔で指揮し、謎を解き明かすというプロットは、当時の犯罪スリラーにおいて極めて異彩を放っていた。物理的な制約を負った主人公が、その卓越した頭脳と洞察力のみで事件の核心に迫る展開は、観客に強い知的好奇心と緊張感を喚起させる。特に、現場から送られてくる断片的な情報をもとに、ライムが状況を再構築していく過程は、パズルを解くような知的な興奮を提供。この知的ゲームとしての面白さは、物語全体の牽引力として機能する。しかし、物語後半における犯人の動機やその正体は、一部で説得力に欠けるとの指摘もある。犯人の異常性と行動原理の描写がやや表層的であり、リンカーン・ライムの深い洞察力とは対照的に、その心理の深掘りが不足している感は否めない。それでも、ニューヨークという大都市の陰鬱な雰囲気を背景に、猟奇的な殺人が繰り広げられるというシチュエーションは、観客を否応なく引き込む。全体として、スリラーとしての骨格は堅牢であり、エンターテイメントとしての完成度は高いと言える。
監督・演出
フィリップ・ノイスの演出は、物語の緊張感を巧みに維持しつつ、視覚的な魅力を最大限に引き出している。限られた空間で展開されるリンカーン・ライムの思考と、広大なニューヨークの街で繰り広げられるアメリア・サックスの現場捜査を、巧みなカット割りで繋ぎ合わせ、物語にリズムと緩急を与えている。特に、ライムの目線から見た部屋の様子や、彼のベッドサイドに設置されたモニターに映し出される現場の映像は、観客にもライムの視点を追体験させる効果を生み出し、閉塞感と同時に、その知的な解放感をもたらす。殺人現場の描写は、過度にグロテスクに傾倒せず、示唆的な表現に留めることで、観客の想像力を刺激し、心理的な恐怖を煽る演出が光る。また、登場人物の感情の機微を捉えるクローズアップや、象徴的な小道具の活用も効果的。ノイスは、この異色のバディものの関係性を丁寧に描き出し、二人の間の信頼と絆が深まっていく様を、言葉だけでなく視覚的に表現することに成功している。
役者の演技
* デンゼル・ワシントン (リンカーン・ライム役)
デンゼル・ワシントンは、全身麻痺という極めて肉体的な制約のある役柄において、その存在感と演技力で圧倒的な深みを見せる。彼の演じるリンカーン・ライムは、かつての輝かしいキャリアを失い、絶望の淵にいる男でありながら、その内に燃える知的好奇心と正義感を失っていない。ワシントンは、微細な表情の変化、眼差しの力強さ、そして限られた発声による言葉の抑揚だけで、ライムの複雑な内面、葛藤、そしてほとばしる情熱を表現。特に、アメリアに指示を出す際の研ぎ澄まされた集中力や、事件の真相に迫るにつれて見せる興奮、そして自らの宿命と向き合う苦悩を、その表情と声のトーンだけで見事に演じ分け、観客にライムの痛みと知性を強く印象付ける。彼の演技は、物理的な不自由さを超越し、人間の精神の力強さを体現するかのよう。
* アンジェリーナ・ジョリー (アメリア・サックス役)
アンジェリーナ・ジョリーは、元モデルの美貌と、事件現場で感情を露わにする繊細さを併せ持つアメリア・サックスを演じる。彼女の演技は、当初の戸惑いや恐怖、そしてリンカーン・ライムとの協力関係の中で徐々に自信とプロフェッショナリズムを身につけていく過程を鮮やかに描き出す。特に、猟奇的な殺人現場での動揺と、ライムの指示に従って冷静に証拠を収集する冷静さとのギャップ、そして精神的な脆さと秘めたる強さの二面性を巧みに表現。身体的なアクションだけでなく、内面的な葛藤を表情と佇まいで表現し、ライムの「目と耳、そして手足」として機能しながらも、一人の人間としての成長を見せる。
* クイーン・ラティファ (テルマ役)
クイーン・ラティファ演じるテルマは、リンカーン・ライムの看護師であり、彼の日常生活を支える重要な存在。彼女の演技は、ライムへの深い献身と愛情、そして彼の気難しい性格に対する理解と忍耐力を温かく表現している。単なる介護者にとどまらず、ライムの精神的な支えとなり、時にユーモアを交えながら彼の心情に寄り添う姿は、物語に人間的な温かみと安らぎをもたらす。彼女の存在は、ライムの孤独を和らげ、観客に感情的な共感を引き出す上で不可欠。
* エド・オニール (ポール・ハーマン刑事役)
エド・オニール演じるポール・ハーマン刑事は、旧態依然とした捜査手法に固執するベテラン刑事として登場。彼はリンカーン・ライムの革新的な捜査方法に懐疑的であり、アメリア・サックスの行動にも批判的な態度を示す。オニールは、その頑固さや職務に対する実直さ、そして時折見せる人間臭さを巧みに演じ、物語にリアルな警察組織の雰囲気を加えている。彼の存在は、ライムとアメリアの異色バディがいかに周囲から見られているかを示す鏡となり、ドラマに奥行きを与えている。
脚本・ストーリー
ジェフリー・ディーヴァーの原作をジェレミー・アイアコンが脚色した本作の脚本は、その構造とテーマにおいて特筆すべき点が多い。物語は、寝たきりの天才捜査官が現場に行けないという物理的な制約を逆手に取り、情報を断片的に与えることで観客にも謎解きに参加させるという、ミステリーとしての醍醐味を最大限に引き出す。複数の殺人事件が連鎖的に発生し、それぞれの現場に残された「骨」や遺留品が、次の犯行を示唆するという構成は、緊迫感を高め、観客の予測を裏切るサプライズを巧みに散りばめている。
特に深く考察すべきは、リンカーン・ライムとアメリア・サックスという異色のバディの関係性とその成長曲線である。ライムは肉体的に囚われているが故に、精神の自由と知性の鋭さを際立たせる。一方、アメリアは身体の自由はあれど、精神的には未熟で、ライムの指示に従うことで徐々にプロの捜査官として覚醒していく。この対照的な二人が、互いの欠けた部分を補完し合い、信頼を築いていく過程は、単なる犯罪捜査の枠を超えた人間ドラマとして機能。脚本は、彼らの対話を通して、人間の尊厳、生と死、そして絶望からの再生といった普遍的なテーマを織り交ぜる。
しかし、前述の通り、物語後半の犯人の動機付けには若干の弱点が見られる。原作小説ではさらに複雑な背景が描かれているが、映画では尺の都合もあり、その深掘りが不足している感は否めない。特に、犯人の個人的な復讐心が、これほど猟奇的な連続殺人に繋がる説得力に欠けるという批判は的を射ている。また、終盤のライムの命を狙う展開は、サスペンスを盛り上げる一方で、物語の論理性に若干の綻びを生じさせている。それでも、全体としては、緻密な証拠分析と心理戦が繰り広げられる展開は秀逸であり、観客を飽きさせない巧みなプロット構築が光る。
映像・美術・衣装・編集・音楽
* 映像
ディーン・セムラーの撮影は、ニューヨークの都市風景を陰鬱かつ美しく捉えている。薄暗いアパートの一室と、雑多な街角、そして猟奇的な殺人現場のコントラストが印象的。ライムの部屋の閉鎖的な雰囲気と、アメリアが駆け巡る街の広がりを対比させ、物語のテーマ性を視覚的に表現。特に、現場の細部に焦点を当てるクローズアップは、ライムの視点とリンクし、観客に彼の観察力を追体験させる。
* 美術
ナイジェル・フェルプスによる美術は、リンカーン・ライムの部屋の緻密なセットデザインが際立つ。彼の書斎は、その知性と病状を同時に物語るかのような、医療機器と書籍が混在した空間であり、ライムのキャラクターを象徴。また、殺人現場の不気味な雰囲気も、美術によって効果的に構築されている。
* 衣装
オデット・ガドリーの衣装デザインは、アメリア・サックスの警官としての未熟さと、女性としての魅力を両立させている。特に、彼女が現場で着る制服や、私服における色彩の選択は、アメリアの心の変化や状況を反映している。ライムの病室での服装も、彼の現在の状況と過去の栄光を対比させる要素として機能。
* 編集
ウィリアム・ホイの編集は、物語のテンポを巧みに操り、サスペンスを維持する上で重要な役割を果たす。ライムとアメリアの視点を交互に提示するモンタージュや、現場のフラッシュバックシーンの挿入は、観客を飽きさせず、物語に引き込む。特に、情報が断片的に提示され、それらがパズルのピースのように組み合わさっていく過程は、編集のリズム感によって生み出される。
* 音楽
作曲家はクレイグ・アームストロング。彼のスコアは、映画全体の不穏な雰囲気と緊張感を高める上で不可欠な要素。ストリングスとピアノを基調としたミニマルな楽曲は、ライムの知的な探求と、アメリアの心理的な葛藤に寄り添い、観客の感情を揺さぶる。
劇中で印象的に使われている楽曲は特に確認できなかったが、アームストロングのオリジナルスコアが全体を支配している。
作品 The Bone Collector
監督 (作品の完成度) フィリップ・ノイス 108.5×0.715 77.6
①脚本、脚色 原作
ジェフリー・ディーバー
脚本
ジェレミー・アイアコン B+7.5×7
②主演 デンゼル・ワシントンB8×3
③助演 アンジェリーナ・ジョリー B8×1
④撮影、視覚効果 ディーン・セムラー B8×1
⑤ 美術、衣装デザイン ナイジェル・フェルプス
B8×1
⑥編集 ウィリアム・ホイ
⑦作曲、歌曲 クレイグ・アームストロング B8×1
デンゼルは幅広い普段は暴れているのに今回は一歩も動かないなんて ア...
デンゼルは幅広い普段は暴れているのに今回は一歩も動かないなんて
アンジーの出世作?
たしかにアンジーにスポットライト当たりまくっててアンジーのプロモーション映画みたいになっていた
やたらアンジーワンカットも多くて違和感
監督とあれかなと思うくらい
推理ものだけど謎が解けた頃に終わった
オチで台無し
よくある猟奇的殺人事件を追う話
ちょっと展開にムリがありつつ、
病室ベッドから捜査の指揮を執る
ボーンシリーズと間違えた‼️❓
デンゼルとアンジー、見るしかないやろ。名作扱いもされてるよう。 事...
リンカーンシリーズの原作を読みたくなる
21世紀の分断された現代にこそ観るべき映画です
最近の映画のようで、本作には在りし日のWTC のツインタワーが写されています
20世紀が終わろうという1999年の作品
遺伝子が人の運命を決めるって説
僕は信じない
(中略)
運命は自分が切り開くってことさ
(中略)
親の運命と君の人生は別
君は優秀な刑事になれる
才能がある
それを捨てるな
主人公リンカーンの台詞です
そのときヒロインのアメリアの目から涙がポロポロこぼれます
才能があるはIt's a giftと英語で言っています
つまり神からの贈り物
無駄にする事は罰があたることなのです
ホラー、スリラー、サスペンスの映画
確かにそうです
それが大変に面白い映画です
でもそれは本当は主題ではなかったのだと思います
なぜ主人公は黒人なのか?
なぜリンカーンという名前なのか?
なぜ彼は四肢が麻痺している存在なのか?
なぜマルコムX を演じたデンゼル・ワシントンが主演なのか?
なぜヒロインは白人でアメリアという名前なのか?
なぜ彼女の父は自殺しているのか
なぜ彼女は女性でしかも小柄で美しいのか?
これらの意味することを考えつめたところに、本作の本当のテーマがあると思います
劇中の物語のように、わざとわかるように様々に証拠を残してあるのです
人種も性別も関係ない
有能さや人間性だけが人間の優劣を決める
それが本作のテーマなのです
共通の目的の為に前向きに努力し、互いに協力して、その有能さを発揮する
そこに本当の尊敬しあえる人間関係があるのです
だから、ハワード警部のような軽蔑すべき人間
セルマのように動けなくても、哀れみや蔑みでなく、一人の人間として普通に扱い、距離感も普通に接する女性
アメリアの身体だけの関係の彼氏
こういった人物が登場するのです
リンカーンとは奴隷解放宣言をした大統領と同じ名前
その名前の主人公は四肢が麻痺して自由には動けません
しかし、彼の精神と知性は自由に活発に大胆に活動しているのです
つまりライムは、黒人が現代でもなお差別的な立場に置かれている現状を象徴しているのです
アメリアとはアメリカのことです
自信を失い、何と戦えばよいのか見失った存在です
この異常な連続殺人事件を通じて、二人は互いに認め合うのです
人種も性別も関係ない
人間として尊敬しあえる関係になるのです
いや、ラストで手を重ねる二人には男女の感情が芽生えています
尊敬しあえる異性だからこそ、恋愛の対象になるのです
身体だけの関係の昔の彼氏のことはもうすっかり過去のことになり忘れ去られているのはもちろんのことです
エンドロールに流れる主題歌の歌詞を引用します
「誇り高く強く生きよ」と
そう教えて来たこの国
「勝利を得るために闘え」と
くじけることなど思いもしなかった
闘う相手はどこに?
私は夢に見放された男
顔を変えて、名を変えても
負け犬には誰も目もくれない
あきらめないで
わたしたちが味方
あきらめないで
何もかも空しく思えても
あきらめないないで
どこかにあなたの場所がある
心安らぐ場所が
寄りかかって
心配し過ぎないで
すべてうまくいく
苦しみにぶつかったら
いつでも戻ってこの腕の中に
あきらめないで
お願い、あきらめないで
ここにはもう居られない
これ以上耐えられない
またあの橋に行ってみよう
暗い川面をながめるために
どんなことが起ころうと
この先に何があろうと
川は静かに流れ続ける
見知らぬ街に移り
住みついてみよう
仕事を求めて群がる男たち
誰からも見放された男たち
あきらめないないで
同じ想いの人がいる
あきらめないないで
あなたはすばらしい人よ
あきらめないで
人生は誰にもつらいのだから
あきらめないで
どこかにあなたの場所がある
心のやすらぎを得られる場所が
長く引用しました
しかしこの主題歌の歌詞こそ、人種差別で疎外された有色人種
とりわけ黒人対してのメッセージであったことが理解できると思います
人種差別で分断されたアメリカを統合するための祈りであったのです
エンドロールは空撮によるクリスマスのNYの夜景です
必ずアメリカは人種差別のない国になる
いつの日にか、来るべき21世紀には必ずそうなってみせる
そのような祈りと誓いの締めくくりです
しかし21世紀も20年も過ぎ去ったのに分断は逆に悪化してしまったのではないのでしょうか?
複雑な想いがぐるぐるとモヤモヤと残ります
名作です
今こそ観るべき映画だと思います
やっと見れた
一言「ほほう!」
20年ほど前の作品、見る機会を逃してました。
殺人現場の証拠保全をきっちりした警官(アンジー)を見込んで。
捜査のメンバーに抜擢し、口頭で指導していく刑事(デンゼル)。
ただデンゼルは事故でほとんど動けない。
ちょっと変わったバディものとも言えます。
最初は逃げ出したアンジーが、デンゼルの叱咤激励で逞しくなっていく。
その経過も、見応えありました。
犯人の顔が最後まで出てこなく、挑戦状のような遺留物を繋ぎ合わせるのが。
おおお!と、鳥肌ものでした。
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今回吹き替えで見たのですが。
デンゼル役が大塚明夫さん。ぴったり。
で、脇役で声優界のもう1人の大塚=大塚芳忠さん(バンキシャ!)も出演。
だけど出番があまりなく。
芳忠さんこんだけ⁈ 明夫さんとのW大塚やってほしいよ、と思ったら。
犯人役(ERに出てた俳優さん)の声が、芳忠さんでした。
結末が出る前に、犯人役が読めちゃったのが。どうかな⁈。
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