「【今作は、息をするように嘘をつき、息を吐くように人を殺す孤独で空っぽな男をマット・デイモンが抑制したスタイルで演じたパトリシア・ハイスミスの原作に忠実な、陰鬱なるトーンで彩られた作品である。】」リプリー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は、息をするように嘘をつき、息を吐くように人を殺す孤独で空っぽな男をマット・デイモンが抑制したスタイルで演じたパトリシア・ハイスミスの原作に忠実な、陰鬱なるトーンで彩られた作品である。】
ー パトリシア・ハイスミスの”The Talented Mr.Repley.”の実写化映画としては、誰もが知る若きアラン・ドロンがリプリーを演じた名作「太陽がいっぱい」が著名であるが、今作はその作品とは原作が同じながら、可なり異なるトーンの作品になっている。
私見だが、ルネ・クレマン監督のニーノ・ロータの哀愁を帯びた曲に彩られた作品が、ルネ・クレマン監督色に染まっているのに対し、今作はアンソニー・ミンゲラ監督が抑制したトーンで、可なり原作に忠実に描いていると思う。
今作では矢張り、トム・リプリーを演じたマット・デイモンの孤独な青年を抑制したトーンで演じている所と、彼がクイアである事がキチンと明示されている所が明らかに「太陽がいっぱい」とは違っている。
更に、富豪の放蕩息子ディッキー・グリーンリーフを演じた若きジュード・ロウの美しさと、彼の恋人マージを演じたグウィネス・パルトローとの関係性の描き方も良い。
マージは今作の中で、唯一善性を保つ人物であり、故に彼女のみがトム・リプリーの行いを見抜くのである。ー
<ラスト、トム・リプリーをディッキー・グリーンリーフと信じている富豪の娘メレディス・ローグ(ケイト・ブランシェット)とトムとの船上での再会シーン。
トム・リプリーと関係を持つピーター・スミス=キングスレー(ジャック・ダヴェンポート)が、二人がキスした瞬間を見たと、ベッドで本を読みながらトム・リプリーの顔も見ずに言った後の、トム・リプリーの行為が何とも言えない後味の悪さを感じさせる作品であり、そこがイヤミスの女王、パトリシア・ハイスミスの作品の世界感を表していると思うのである。>
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