海の上のピアニストのレビュー・感想・評価
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船上編「汚れなき悪戯」
「ひとりの捨て子が、素敵なおじさんたちに拾われて、うんと可愛がられて、そして死んでいく」。
マルセリーノ。そしてこの1900。
貧しい、定められた境遇に生きる船員と修道士たちに与えられた、
この幼子は神からのギフトだ。
今作「海の上のピアニスト」は、物語の展開的には1900の成長後に重点が置かれているけれど、冒頭描かれていた「船員たちと幼子が一緒に暮らした船倉でのシーン」が、心に深く残る。
つまり、世から隔絶された海の上の、船の中の、そのまた隠された窓のない船倉での、彼らの共生のシーン。
「船」を舞台にした数々の名画は、その不安定性と閉所性のゆえに、なにか独特の物語世界が醸されていて、
だから実に面白い。
170分のイタリア版、これ観てみたいです。
イタリア映画って、人々がささやかに暮らして、そして少しだけ幸せになったのに 破壊で終わるの。
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僕は何度か台風の客船を体験しています。
下船したあと四つん這いになって、ペタペタと港のコンクリの地面を叩いて確かめる「動かぬ大地」の、どれだけ頼もしく、嬉しく思えたことか!
そしてあの「眼振」って、実験・再現出来るんですよ、ぐるぐる回って目を回した人の眼を覗きこんで見て下さいね。
不朽の名作
「自由」の定義
お金はある程度ある。仕事を変えてもいいし、何なら家族を捨てて世界中どこへでも行ける。
私たちは「自由」の世界に生きている。
でも誰も人生を変えようとしない。その先が良くなるか、悪くなるか、やってみないと分からないのに。
人は真っ白な未来に無限の選択肢を与えられると、どうしたらいいのか全く身動きが取れなくなってしまうのは何とも皮肉なこと。
四角切り取られたcanvasや88鍵の銀盤のように、あえて制約下におかれることで人は無限の力を発揮する。
1900はなぜ船を降りなかったのか。
彼の話を聞いてもまだ納得できないこともあるが、船の上は彼の人生すべて。彼の無限のイマジネーションは地平の彼方と天空の先まで駆け抜ける。
生前に日本の外に一歩も出ることはなかった坂本龍馬は、世界のなかでの日本という存在を頭の中で理解できていたらしい。
自分の目でみえる「世界」だけがすべてではない。
作品の細かい点はツッコミどころはあるが、そこは目をつぶって作品のファンタジーをめいっぱい楽しみたい。音楽はどんなに優秀なプレゼンテーターよりも能弁だということをあらためて教えてくれる。
廃墟好きの自分としては、用済みになった客船の姿が往年の華やかなりし頃をフラッシュバックさせるような佇まいを静かにみせてくれる。
陸に住む私たち
この上ない現代へのアンチテーゼ。
海の上でしか生きられないピアニストは、現代社会を俯瞰することができた。
限りないビルの高さ、限りない道の本数、限りない金、限りない女、そして限りない戦場。
すべて海の上から音楽を通して、見てしまったのだろう。
そうなったら怖くて陸には降りれない。この映画のピアニストのようにすべてを見てしまったら。。
ピアニストの親友の船酔いの後遺症の残った揺れる目は、現代の私たちの目と同じだ。
限りない選択肢に将来を迷う目、限りない欲望に惑わされる目。
それに対して、ピアニストの目はただ一点を見つめる。
迷わない。人生はピアノだ。
陸に暮らす私もただ一点を見つめていたい。何事にも惑わされず限りある鍵盤の上で無限に生きたい。
限りない鍵盤の上で惑わされて生きるのは嫌だ。
そんな声が爆発する船から聞こえた。
ナィンティーンハンドレット!
言葉
味わい深い作品
ある男の物語
名作の仲間入り
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