海の上のピアニストのレビュー・感想・評価
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「自由」の定義
お金はある程度ある。仕事を変えてもいいし、何なら家族を捨てて世界中どこへでも行ける。
私たちは「自由」の世界に生きている。
でも誰も人生を変えようとしない。その先が良くなるか、悪くなるか、やってみないと分からないのに。
人は真っ白な未来に無限の選択肢を与えられると、どうしたらいいのか全く身動きが取れなくなってしまうのは何とも皮肉なこと。
四角切り取られたcanvasや88鍵の銀盤のように、あえて制約下におかれることで人は無限の力を発揮する。
1900はなぜ船を降りなかったのか。
彼の話を聞いてもまだ納得できないこともあるが、船の上は彼の人生すべて。彼の無限のイマジネーションは地平の彼方と天空の先まで駆け抜ける。
生前に日本の外に一歩も出ることはなかった坂本龍馬は、世界のなかでの日本という存在を頭の中で理解できていたらしい。
自分の目でみえる「世界」だけがすべてではない。
作品の細かい点はツッコミどころはあるが、そこは目をつぶって作品のファンタジーをめいっぱい楽しみたい。音楽はどんなに優秀なプレゼンテーターよりも能弁だということをあらためて教えてくれる。
廃墟好きの自分としては、用済みになった客船の姿が往年の華やかなりし頃をフラッシュバックさせるような佇まいを静かにみせてくれる。
陸に住む私たち
この上ない現代へのアンチテーゼ。
海の上でしか生きられないピアニストは、現代社会を俯瞰することができた。
限りないビルの高さ、限りない道の本数、限りない金、限りない女、そして限りない戦場。
すべて海の上から音楽を通して、見てしまったのだろう。
そうなったら怖くて陸には降りれない。この映画のピアニストのようにすべてを見てしまったら。。
ピアニストの親友の船酔いの後遺症の残った揺れる目は、現代の私たちの目と同じだ。
限りない選択肢に将来を迷う目、限りない欲望に惑わされる目。
それに対して、ピアニストの目はただ一点を見つめる。
迷わない。人生はピアノだ。
陸に暮らす私もただ一点を見つめていたい。何事にも惑わされず限りある鍵盤の上で無限に生きたい。
限りない鍵盤の上で惑わされて生きるのは嫌だ。
そんな声が爆発する船から聞こえた。
ナィンティーンハンドレット!
言葉
味わい深い作品
ある男の物語
名作の仲間入り
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