「メリークリスマス!Mr.ローレンス」戦場のメリークリスマス ストレンジラヴ氏さんの映画レビュー(感想・評価)
メリークリスマス!Mr.ローレンス
「メリークリスマス...メリークリスマス!Mr.ローレンス」
"教授"坂本龍一の追悼上映として鑑賞。
道理で世界的にウケるわけだ。
上の感想にはいい意味と悪い意味の両面がある。
本作で描かれている日本軍と、その精神性は、謂わば新渡戸稲造が「武士道」で描き、(読んでいないけど)恐らくベネディクトが「菊と刀」で紹介した、「外国向け」の日本人の精神がベースになっている。
なので日本軍の胸糞描写と同時に外国人からすれば死と隣り合わせの「ジャパニーズ・スピリット」に美を見出したはずだ。
だが同時に、それはサムライの時代が終わってから創り出された幻の精神であり、実際の日本人のそれとは異なる。
だから日本人が本作を観ると良さ以上に違和感が浮き彫りになってくるはずだ。
当然、大島渚監督もそれは承知の上で、葛藤もあっただろうが外国人の原作に従った描写をしたのだろうと思う。
そしてこの「幻のスピリット」がセクシュアリティと結び付くと、いよいよこの差は歴然としてくる。
+に+を掛けるか、-に+を掛けるかでこの乖離はさらに大きなものとなる。
なので僕としては美しさ以上に不気味さや気持ち悪さを覚えた作品だった。
ひとついただけなかったのはキャスティング。もはやこのキャスティング以外考えられないというステータスまで来ているが、ゼロフラットで考えてみると何故ここまでミュージシャンの起用に拘ったのかは疑問が残る。
何故かと言われれば、バラエティ慣れしていないせいか、とにかく日本側の滑舌が悪く日本語なのに聞き取りにくい場面がいくつも見受けられた。滑舌の悪さをモノマネのネタにされている北野武の喋りが一番まともに聞こえたくらいだから相当なものだったと思う。
これを本業の俳優で製作したらどういう作品になったのか、却って興味をそそられた。