「これは確かに、大島渚監督の代表作品と深く納得させられる一作」戦場のメリークリスマス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
これは確かに、大島渚監督の代表作品と深く納得させられる一作
『愛のコリーダ』(1976)など、最近デジタル修復された大島渚監督作品を劇場で鑑賞できる機会があって、嬉しい限りなのですが、さすが名作だけになかなか席が確保できず何度かの挑戦でようやく鑑賞できました。
誰もが知る坂本龍一の旋律、戦争という極限状態における、錯綜する男達の関係性という大島監督のテーマ、そして(ビート)たけしをはじめとした俳優達の神がかった演技によって、確かにこの作品は大島渚監督の代表作であるだけでなく、映画史に残る作品であることを、現代の観客の目線でも深く納得させられました。
階級と民族性、管理する側とされる側、といった重層的な関係性が織り込まれているのに、作品の上映時間そのものは現代の大作映画と比較するとコンパクトで、それだけにローレンス(トム・コンティ)だけでなくほとんどの登場人物の背景は大胆に省略されていて(日本側の軍人は名字の漢字すら分からない)、「今ここ」の関係、接触に全てが凝縮されています。
北野武は本作によって映画俳優として注目を集め、その後のキャリアに繋がっていったのですが、ハラ軍曹という、残虐かつ冷淡だが、どこか愛嬌と無邪気さがある、という複雑な人物像を見事に演じていて、彼の映画人としての特性を見出した大島監督の慧眼には改めて驚かされました。
デジタルリマスターによって映像の色彩は極めて鮮やかなんですが、たけしと坂本龍一が早口で喋ったときに何を言っているのか分からないところが、『七人の侍』(1954)の三船敏郎を連想して少し笑ってしまいました。もしかしたら公開当時から聞き取りにくかったとか!?