善き人のためのソナタのレビュー・感想・評価
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善き人ヴィースラーに目はウルリッヒ
野坂昭如や高畑勲の火垂るの墓やスピルバーグのJAWS程ではありませんでしたが、映画館を出てから1時間位は放心状態でした。
映画館を出てから食欲はありません。
之は間違いなく名作なのだと確信をもって言えます。
スカッとはしないがじんわりする映画
私のための本だ
ベルリンの壁崩壊から、もうすぐ36年。そして、この映画がつくられてもうすぐ20年経つ。
現代にいる我々は、この話を、「冷戦時代の産物」で終わらせることができるだろうか。
イデオロギーはともかくとして、監視と粛正で存続させないと維持できない組織に、真っ当な正義も未来もあるはずがない。けれども、費用対効果を度外視して、あえてそういう組織を求めたがっている人々のメンタリティは、どうなっているのだろうかと思わされる。
今作は、遠い他国の関係ない人々の話ではない。自分の持つ正義とはズレた他者に対して、徹底的に不寛容な意識を抱いてしまう(もちろん自分も含めた)人々の話である。
もちろん、今作はフィクションではあるけれど、崇高なものに触れた魂と、肉欲に溺れた生理的欲求との相剋において、主人公の中では芸術の崇高さが勝利する展開に救われる思いがする。けれども、映画でもそうだったように、現実の中では、必ずしもそういう結末になるとは限らない。
それでもやっぱり、人として生まれたからには、より美しいものを求める気持ちは、決して忘れたくないと思わされるラストシーンだった。
映画から少し離れるかもしれないが、映画で観る限り、東ドイツが、尋問や監視の記録文書を全て保管していたことに驚きを禁じ得ない。
日本では、敗戦時の文書廃棄どころではなく、今も文書改竄や廃棄の問題で、情報公開のあり方が問われ続けている中、過去の記録がたどれるようにしておくことは、とても大切なことだと思わされる。
重いテーマに気が沈むどころか むしろ優しい気持ちに
本作の評判はこれまでに何度か見聞きしてきて、冷戦時のドイツ問題ものは気が沈みそうだなぁ…とあえて避けてきたが、やはり第79回アカデミー賞外国語映画賞受賞作品であれば一度は観ねばと、配信見放題終了間近を機に思いきって鑑賞。
観終えるとこれは意外や意外、気が沈むどころかむしろとても優しい気持ちに。
前半は思った通り重々しい雰囲気だったし、終始不穏な緊張感は続き、やはりいたたまれない悲劇も起こってしまうのだが、主人公の心の動きに観ているこちらも自然と溶け合っていき、気がつけば予期せぬほど心が温かくなっている。
ストーリーも良いが邦題もとても良い。「善き人のためのソナタ」なんとも言えぬ優しく平和な響きがある。原題の直訳ではここまでの雰囲気は出せなかっただろう。
いずれにしても、アカデミー賞外国語映画賞受賞は伊達ではない。思いきって観て本当に良かったと思える作品だ。
言葉が力を持った時代
東ドイツの諜報機関をシュタージと言い、その東ドイツ内でその東ドイツ...
東ドイツの諜報機関をシュタージと言い、その東ドイツ内でその東ドイツの体制批判をしてはいけませんが、その東ドイツのその諜報機関のシュタージの一人がヘッドホンをして、その体制批判をしかねないその脚本家を監視して盗聴もしてますが、SONYのウォークマンのそのテレビCMも猿がヘッドホンをして音楽を聴いている広告でしたが、また最近に松田聖子と小泉今日子がヘッドホンをして並ぶその広告を目にしましたが、もう冷戦時代が終わってますが、その東ドイツのその元諜報機関員が、もう開かれた自由主義圏で、再就職をする際のその就職を希望するその企業に出すその履歴書にシュタージ勤務でスパイ活動をしていたと書けないと思いますが、またスパイ行為自体が裏切り行為でばれたら通常、周りに無視されるか殺されてしまうかになると思いますが
静かな中に、力強さがある傑作だ。
旧東ドイツ。秘密警察(シュタージ)のヴィースラー大尉は、劇作家ドライマンの盗聴に従事する。盗聴を要請した大臣は、ドライマンの恋人に対して、邪な気持ちを抱いていた、、、。
極めて上質で静謐な空気のなか、胸が押しつぶされそうな、ヒューマン・スリラーだ。ウルリッヒ・ミューエが、劇作家の思いを知り、次第に本当の自分を発見する主人公を、見事に演じている。
国家のためにと言いつつ、己の欲望を満たすための欺瞞、一度かけられたら、執拗に追及される疑惑、そして、自由にものが言えない専制主義の息苦しさを、非常に落ち着いた雰囲気で醸し出している。
自分の人間性を発見したスパイを主人公に、繊細で巧みなストーリー運びで、一種の大きな賭けに出た男を、絶妙な緊張感で描く。悲劇的な人間ドラマの中で、恐怖体制を暴露し、個人の強烈な反抗を、静かな中に力強く描いた傑作だ。
国家保安局(シュタージ)が支配する1984年の東ベルリンを舞台に...
国家保安局(シュタージ)が支配する1984年の東ベルリンを舞台に、盗聴任務に従事する1人の局員の心の揺らぎを通して東ドイツの徹底された監視社会の実情と問題を静かに描いたヒューマン映画。
世間的には非常に評価が高い作品ではある。が、本当にヴィースラー大尉は『善き人』化したのだろうか?
大学の教壇に立ち学生に講義を行い、冷徹に学生の選別を行っているシーンがある。価値観が固定化しているであろう年齢の男性が、全てのキャリアを投げ捨ててまで短期間で善人化することが果たしてできるのだろうか。違和感を感じる。
大尉はもともと女優の熱烈なファンという描写もあるが、女優が盗聴対象となったので、女優の生活を守るためにシュタージの掟を破らざるを得ず、結果、女優の恋人であるドライマンを保護することになっただけ、という解釈も不可能ではない。
もともとヴィースラー大尉は『善き人』であり、その要素を隠しながら嫌々にシュタージの仕事をしているという描写があれば、解釈も変わるのだが・・・。
なお、国家保安局(通称:シュタージ)はドイツ語の Ministerium für Staatssicherheit の略称から由来している。ドイツ民主共和国(東ドイツ)の秘密警察・諜報機関を統括する省庁で1947年のK-5(秘密警察組織・第5委員部)を前身として始まり、1989年ベルリンの壁崩壊の1990年に解体されるまで続いた。ゲシュタポ(ナチス・ドイツ期の秘密警察部門:Geheime Staatspolizei)の手法を踏襲した徹底的な相互監視網を敷いて国民生活の抑圧を行った。組織解体時には9-10万人の正規職員を抱えていたとの記載がある。
対照的なふたり
演技は目で
おさえた動き、セリフも少なく。
だのに画面からあふれ出てくるこの感情はなんなんだ。
まん丸の目が何よりも語っている。
ラストの誇らしげな眼!目です!
あの眼は一生忘れられないかもしれない。
公安の彼をかりたてたのが
たった一度だけ聴いた一曲というのも
あまりにも印象的だ。
芸術の持つ力ってそういう底知れないものがある。
この映画の二人の男のように、
直接話すことはなくても
語れるなにかがこの世界にはあるのだと
うれしく感じた。
しかし、公安の情報は本当に公表しているの?
身の安全は保障されているのだろうか…?
リアルタイムで東西ドイツの壁が壊れたニュースを見た。
その当時も衝撃だったが
この映画で登場した際には鳥肌がたった。
日本ではたしか平成元年、昭和天皇が亡くなった翌年のこと。
芸術の力は絶大
見事なストーリー
屋根裏の常人
難しく陰湿な話かと思いきや、
秘密警察が反体制派を監視する中でだけ起こる物語
なので分かりやすく入りやすかった。
敵対する立場である秘密警察に身を置き、
随時反体制派の行動を報告しなけれざならない立場に
いながら、反体制派の身を陰ながら守ると言う設定が
まず面白かった。
ヒーローみたいに目立つ人でもなく、
影のヒーローでもない、
ただの普通の面白みのない人が主人公というのも
良かった。
反体制派の自由な思想、何にも縛られてない発想に
憧れを持ったのだと思う。
反体制派が憧れであり主人公はファンと言う立場
はまるで今で言う推し活の様。
壁が崩壊してからの物語の改修も派手にせず
だけど、綺麗にまとまっててとても気持ち良かったです。
ここでも、ファンと憧れの適切な距離感が出てて
そこも良かったなぁ。
心に残る映画のひとつ
ジワジワ忍び寄る東ドイツの静かな恐怖
戦争やユダヤ人迫害の凄惨さと、東ドイツの抑制された静かな恐怖は別物だけど、1914年の第一次世界大戦開戦から辿るドイツの悲劇は、第二次大戦で終わらず、東ベルリンから89年の壁崩壊まで続いていたことに、あらためて気づかされた。
東ベルリンの質素で虚無な空気感と、ウルリッヒ・ミューエの気持ちが読めない表情が、その「静かな恐怖」を見事に表現しているように思う。
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