「絶句した」ヴェラ・ドレイク ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
絶句した
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イギリスで中絶が合法化したのが、1967年。私が生まれるわずか7年前のこと。まず、この事自体が信じ難いことですが、更にこの時代に中絶ほう助で禁固刑になることに、絶句しました。
この作品は当たり前ながら、中絶の是非を問う作品ではありません。国家の是非を問う作品となっています。
主人公のヴェラは、面倒見が良くお人好しな優しい人物。彼女は、望まない妊娠をした女性に対して、困っているから、助けたかっただけです。ただ、それだけです。
善意でしたことであっても、法という名の下でヴェラは裁かれ傷つきます。中絶も他人から言われる以上に、当人は十分傷つきます。男性達は国家の名の下に行われる戦争によって傷を受けています。
マイク・リーは、傷ついた彼らに寄り添う様に、時には冗談を時には本音を語らせ、権力を批判します。
「不公平だよ。金持ちならいい。食べ物が買えなきゃ子供を育てられない」
そして、ラストシーン。
中絶をほう助した罪で服役している再犯の女性達は、ヴェラに向かってすぐに出所できるとも、すぐに時代が変わるとも言える言葉を投げかけます。
「大丈夫よ、すぐよ」
フェミニストのメタファーともとれる再犯の女性達とヴェラの様な普通の女性が、「信条」ではなく「心情」が一致しているということを描いた瞬間。マイク・リーの懐深すぎます。本当どうなってるんでしょう。やられました。
彼女達の言葉から17年後、中絶はイギリスで合法化されます。
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