「異様な臨場感」トゥモロー・ワールド ts-39さんの映画レビュー(感想・評価)
異様な臨場感
良い映画とは何よりもまず映画的な体験でなければならない。物語を述べるという点では、映画は決して小説には勝てない。原作を忠実に追ったハリー・ポッター 1, 2 より、アルフォンソ・キュアロンの撮った 3 のほうが映画的に優れているのは当然である。重要なのは没入感、緊迫感であり、今我々は何かすごいものを目撃しているのだ、という気にさせることである。その意味でトゥモロー・ワールドは、比類ない映画的体験だ。
これが並みの映画でないということは、冒頭のコーヒーショップの場面ですぐ分かる。ワンカットで突然のテロ爆破まで描き、我々を現場に放り込む。素晴らしいことに、撮影技術がそれ自体のためではなく、あくまでも、一人の人間ではどうしようもない巨大な運命の中のかすかな希望を描くというこの映画の目的のために使われている。常にセオを中心にし、ワンカット長回しによる異様な臨場感を用いることで、我々はセオと現実を共有する。セオたちが階段を下りてくるあの心を揺さぶる映画的瞬間に必要なのは、子供が生まれなくなった原因の説明などではなく、子供が本当にいないという現実感なのだ。最初から最後まで緊張が持続する傑作である。
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