「生き甲斐が自分を苦しめ、そして自分を救う」戦場のピアニスト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
生き甲斐が自分を苦しめ、そして自分を救う
ユダヤ人ピアニストの第二次大戦中の壮絶な実話を映画化。
2002年カンヌ国際映画祭パルムドール、アカデミー賞3部門(監督・主演男優・脚色)受賞。
劇中の主人公と似た過去を持つロマン・ポランスキー監督渾身の一作。
ナチスドイツによるユダヤ人迫害。
「アンネの日記」「シンドラーのリスト」など多くの映画で描かれているが、人が人にする仕打ちだとは思えない。
ユダヤ人は自由を奪われ、住む場所も限定され、公衆の面前で辱めを受け、人の扱いではない。
ナチスドイツはどんな横暴も許され、平然と命さえ奪う。挙げ句の果てにはホロコーストという名の大量虐殺…。
ヒトラーはユダヤ人を劣等民族と吐き捨てたが、人に優劣を付けるヒトラーこそ劣等感の塊である。
人類の歴史上の汚点であり、大犯罪だ。
ピアニストのシュピルマン。生き甲斐はピアノを弾く事。
収容所行きの列車に乗せられる寸前助けられ、あちこち逃げ隠れしながら生き延びる。生死のサバイバル。
恐怖とピアノを弾きたい思いに駆られ、憔悴し自分を苦しめる事もあった。
しかし、そのピアノが運命を変えた。
絶望的状況下、自分を救う事になったピアノの音色が美しく響く。
シュピルマンのピアノに心打たれ、彼を救ったドイツ人将校ホーゼンフェルト。ナチスドイツは悪であっても一人の人間。人は根本的に善であるという事を信じさせてくれる。
静かに深く胸に染み入る。
久し振りに見たが、やはり素晴らしい映画だった。
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