弓のレビュー・感想・評価
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いや、ちがう、お前なんかと一緒にすんなっ
そもそも、普通のサラリーマンのオレにとって、映画が好きだっていう人に出会う確率は決して高くない。仮に出会ったとしよう。まあ、まず映画の話題なんかしないのだが。
「最近何見ました?」
「テレビで『アルマゲドン』見ました」
大半がこうであろう。
運がよければ(悪ければ?)
「テルマエ・ロマエ観ました」
そんなところだ。
「園子温観ました」は運悪く「冷たい熱帯魚」を知っている人にブチ当たったら、サラリーマン人生を失うようで、口が裂けてもいえないが、
「キム・ギドクを観た」というと、下手をすると人間として見られなくなる可能性もある。しかしまあ、交通事故に遭うぐらいの確率だとは思う。
そのぐらい普通のサラリーマンは映画を観ない。
さて、キム・ギドクの「弓」
映画「さんかく」は「おまえ、カッコつけても、ロリなんだろ?え?」と物凄い攻撃を受けながらも、耐え忍んだ記憶があるが、本作は始めっから「わしゃロリよ。ええじゃろが」と猛烈な自己主張からスタートしてくれるので、なんだか潔さを感じて好印象(たぶんいい意味で)。
「さんかく」の元AKBのなんとかさんの攻撃は確かに凄いモノがあったが、こっちはもうちょいエキセントリック。
むしろじじいが物凄い。
少女の17歳の誕生日にじじいは結婚するつもりでいるのだが、それまで操は守る。アリとあらゆる害虫から少女を弓で守る。そのくせ、2段ベッドで少女のおててを掴んでニンマリする。
ところが害虫が少女のハートを射止めたのか、じじいは急に心配になり、17歳の前に少女を抱くのかと思えば、カレンダーの日付を先送りする!しまいには1ヶ月も先まで進める。
素晴らしいぜ、このじじいの偏屈愛。
そんなじじいの焦りっぷりを楽しむ少女のとる行動は万国共通。
マゾ男の独壇場。
結局じじいは捨てられる形になるのだが、すんでのところで、逆転劇が起こる。
この映画で弓は少女を守る武器でもあれば、弦で音を鳴らす安らぎの道具でもあり、少女を危険にさらしつつそこで発揮される占いの道具でもある。
しかし勘のいい人なら、即座に「男性器」のメタファーということも想像に難くないはずだ。
ラストはオレが想像してたドンピシャな展開になってしまった。
じじいが空中に打ち上げた弓の行き先はあそこしかないのだ。
やばい、このエロティックな展開はヤバすぎる。
やばい、このエロティックな展開を予見したオレ、ヤバすぎる。
しばらく映画観ないでおこう。
オレは普通のサラリーマンなのだ、たぶん。
海上の少女、大海を知らず。
なんとも不思議な物語。
おっちゃんに誘拐され、10年間船に監禁された少女ということもあり、受け入れられる人とそうでない人がはっきり分かれる作品だと思います。
確かにおっちゃんの欲望のための行動はキモい。
でも、なんだろう。このおっちゃんなんだか憎めない。物語前半では一緒に結婚してほしいとさえ思ってしまった。
我々も洗脳されているのでしょうか?
そしてこの映画の最大の特徴である、このふたりだけ喋らないということ。
彼らのコミュニケーション手段は弓。
矢を放ち、音楽を奏でることこそが彼らのセリフ。
最終的に少女が船に戻り、おっちゃん側に靡いたのも他の領域のものには理解し得ないふたりだけの絆みたいなものなのかなと思ったり。
弓占いの部分はほんとに危なっかしいのに音楽のせいでエモーショナルに。
大学生が来てからの緊張感も弓を張っていくようで、とても良かったです。
ラストの結婚はおっちゃんの幻想なのでしょうか。
おっちゃんの魂が最後のあの矢に込められて、純粋無垢な白装束の少女の股間に突き刺さる処女喪失。
あの瞬間今までの少女の束縛から放たれ、大人の女性となって新たな海へ漕ぎ出していく。
とにかく不思議な90分間でした。
少女役のハン・ヨルムさんは本当に名演でした。
細かい表情の演技が素晴らしかった。
大人っぽい妖艶な顔から大学生に見せる乙女な顔、あどけない幼さのなかに女性らしい強さ、凛々しさを感じました。
この犯罪行為を美学としてしまう自分も相当ヤベェやつだなと思いますが、美しい音楽とあの生活感漂う船の不思議な空間、雰囲気は万人受けすると信じています。
芸術?
劇中の言葉が少なく、音楽とハンヨルムの幼き美しさが、エロくて芸術っぽいと錯覚する。
海の上で、老年男性と若き女子が2人きり、
エロい妄想をしたくなる環境。
若い女子を育てて、結婚しようとするストーリーって。キムギドクは病んでるな。
これで2人が身体の関係をもっては欲望に従うエロ映画だった。
身体でなく魂で関係をもつって表現にしたのが、流石というか、これまた芸術感。
最後に船が沈み、今までの生活から離れ、世に戻っていくハンヨルムのシーンは、妄想から解き放たれたい。キムギドクの内面を表しているようにも感じる。
現実ではできない妄想を映画にして世に出してる感じ、それが芸術ってことで、ある程度評価されるから、世の中怖い。
って思っても、それを観てしまうんだな。
人を殺しそうな雰囲気もあったけど、人が死ななくてよかった。
ハンヨルムに魅せられたので、幼さやエロさでない部分も気になり、他の作品も検索したが近年の作品がないのが残念。
引退したのかな、、、
じじいのファンタジー
初キムギドク
ようやく見れました
セリフがほとんどないのがすごい
そのぶん映像と音楽に集中できた
なにより少女が透明感があって可憐で、なにをしててもそれだけで絵になる、
が
反抗期シーンが辛かった
はじめはニコニコしてたのに、青年が現れてから怒ってばかり
じじいと孫とかだったら、設定といいすごく微笑ましい夢物語だったんだろうけど
このじじいの夢が「結婚」なんだもん。
それに最後のシーンは、結局じじいの念願はかなったということなんだろうけど、
喪失のシーンがなんとも生々しい
とにかくキャストがとてもよかった
韓国映画はほとんど見たことなかったのですが、
キムギドクを他にも見てみたい!と思える作品
もの凄い独創性
もの凄い独創性。その作劇術、発想の大胆さにはただただ驚くだけです。
ゆらゆらと揺れるブランコに悠久なる水面。
《その日》を待ちわびる日付の印に、密かに買い揃えた品々。
感情の高ぶりを表す静謐なる雅な旋律。
2人の中にあった“信頼”はほんの小さなきっかけから崩壊していきます。
作品中ほとんど台詞は無く表情のみで総ては語られ、その心を射抜く“眼差し”で観客に訴えかけてきます。それは単なるカットの繋ぎに過ぎないのにとても大きな‘暴力’がそこには内包しているのです。
道徳的に大変な問題を抱えているのにどうしてこんなにも美しいのでしょう。
「これは果たしてどうなるんだろう…」と最後まで画面上に釘付けになってしまいました。
(2006年9月13日Bunkamura ル・シネマ1)
異常な愛
幼い少女を誘拐して10年もの間船の上で暮らし17歳の誕生日に結婚するという老人の欲望を描いている。結婚式のために少しずつ衣装を買い揃え、カレンダーに毎日バツで記しをつけ時に待てず何日もいっぺんにバツ印をつけてずるをする老人。
船に来る青年に好意を抱くようになる少女を嫉妬深く見つめるのはいくつになっても人を愛する心には変わりないし、またどうしようもない切なさ哀しさを感じてしまった。
青年が少女の親を探し出し老人に少女を解放してあげて欲しいと懇願し2人は船に乗り全ては正常な方向へと解決すると思いきや老人が船と結んだ縄で首を吊り自殺しようとして死に切れずそれを見た少女も老人と結婚することを選ぶのだ。
しかし結婚式を挙げたあと老人は海に飛び込み自らの人生に終わりを告げた。
しかし老人の魂は少女の処女を奪い欲望を達成した。古くなった老人の船は沈没する。
美しい少女をずっと囲った老人は悪いが見ていて切なく最後やはり死を選択したのは少女を本当に愛していたから。少女も自分を愛してくれているのはもはやこの老人だとわかって結婚しようと決心したのだと思う。
自分を愛してくれる人はそうそういない。
最後の描きかたはキムギドク監督らしいとおもった。
美しい海の映像とノスタルジーな音楽とがとても合ってストーリーも面白く見応えあった。
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