劇場公開日 2006年9月9日

弓 : 映画評論・批評

2006年9月5日更新

2006年9月9日よりBunkamuraル・シネマにてにてロードショー

キム・ギドク自身の孤立感や疎外感を反映

つい最近の“引退宣言”で僕らを驚かせたキム・ギドク監督の最新作。日本でも“韓国映画の鬼才”としてカルト的な支持を集めるギドク監督だが、彼にインタビューした際の印象からいっても、現在の華やかな話題に包まれた韓国映画界で彼が孤立感を深めているのは事実で、それが確実に今回の騒動の背景としてあると思う。

海上にぽつんと1艘だけ浮かぶ船に、老人と少女と呼べそうな年頃の若い娘が2人で暮らしている。港から客を案内して釣りをさせる商売をしているが、血縁関係ではないらしいこの2人、いったいどんな関係なのか?客の1人の若い男性との出会いで娘に心境の変化が起こり、老人に反抗的な態度を取り始める。奇妙な三角関係はどんな結末へ向かうのか……。極端に限定された舞台設定は、湖に浮かぶ寺院を舞台とする「春夏秋冬そして春」などギドク作品ではすでに馴染みのあるものだ。彼は周囲から孤立した世界で展開される人間の裸形の欲望を描く映画作家であり、それは彼自身の孤立感や疎外感の反映でもある。彼の映画は孤立する存在の禍禍しい力で特徴づけられるが、他方でその息苦しさで僕らを圧迫しもするだろう。“引退宣言”以降、彼は孤立を深めるのか、別の方向を打ち出すのか……興味は尽きないが、まずは本作でギドクならではの世界を十分味わっておこう。

(北小路隆志)

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