サンキュー・スモーキング : 映画評論・批評
2006年10月3日更新
2006年10月14日よりシャンテシネほかにてロードショー
知的で噛みごたえのある痛快風刺コメディ
現代は情報操作の時代。特にアメリカは、政治から戦争、子供のおもちゃまで、ありとあらゆるものが情報操作=スピンニングで成り立っているのだと実感させる、痛快な風刺コメディだ。主人公のニックを、スピンニングの告発者ではなく、スピンニングの仕掛け人にしたのも面白い。彼はタバコ研究アカデミーのスポークスマン。タバコの害は百も承知で、仕事としてタバコ業界を擁護しているのだが、その話術があまりに素晴らしくて、TVのディベートで相手をやっつけるシーンでは、嫌煙家の私でさえ拍手したくなった。その瞬間、「世の中の好感を得ることがスピンニングの要なのね」と、その仕掛けが納得できた。
監督のジェイソン・ライトマンは、「ゴーストバスターズ」のアイバン・ライトマンの息子。同じコメディでも、父親よりもずいぶんと知的で噛みごたえのある映画を作ったものだ。アーロン・エッカートを主役に起用したセンスも買い。こんなことやっているとヤバイかもと意識しつつ、それでもディベートを楽しみ、仕事に熱中するニックの覚めたバランス感覚を、実にチャーミングに見せてくれる。ケイティ・ホームズの体当たりセックス・シーンも笑えます。
(森山京子)