「詐欺師はギャングを騙し、映画は観客を騙す」スティング jin-inuさんの映画レビュー(感想・評価)
詐欺師はギャングを騙し、映画は観客を騙す
1936(S11)のシカゴという背景、テーマ曲「ジ・エンターテイナー」、俳優たちの演技、脚本、章立てされた演出、懐かし風イラスト、仲間と信頼というテーマ、古き良きアメリカ映画を感じさせるスタイリッシュでオールドスクールなルック。言わずと知れた名作です。
ひょんなことからギャングの金に手を付けてしまった詐欺師チーム。チームリーダーは殺され、若きメンバーであるジョニー・フッカー(ロバート・レッドフォード)な難を逃れリーダーの遺言に従いシカゴの伝説的大物詐欺師、ヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)を頼ります。
本作公開時(1973)、ポール・ニューマン48歳、ロバート・レッドフォード37歳。ポール・ニューマンは一見冴えなさそうな中年男、ロバート・レッドフォードは生意気な未熟者のキャラがハマっています。
フッカーのリーダーと旧知の仲だったらしいゴンドーフは、弔い合戦を兼ねて敵のギャングを相手に、競馬場でのレース結果と電信で伝えられるレース結果の間に生じるわずかなタイムラグを利用した大掛かりな詐欺を仕掛けます。
ギャング相手という危険を顧みないゴンドーフの男気。振り込め詐欺が得意なせこいJPドラゴンとは大違いです。
ゴンドーフの声掛けで続々と有能な仲間たちが集結。企画を立て、調査をし、筋を書き、オーディションを行いキャストを集め、衣装を準備し、セットを組む。ゴンドーフはプロデューサー兼監督兼主役俳優。彼らのやってることは映画作りそのもの。空砲を使ったラストの撃ち合いも映画そのもの。カメラがないだけで、まるで映画の撮影現場を見ているようです。「だます」という点では、映画も一種の詐欺です。騙されたギャングは激怒し、騙された観客は大喜びする点は違いますが。
ギャング相手の騙し合い、フッカーとゴンドーフの間の騙し合い、そこにFBIと殺し屋が絡んで情況は複雑に。でも有能な大勢の仲間と信頼関係があればどんな困難も乗り越えられます。映画づくりの楽しさを教えてくれる映画でした。そりゃ作品賞とりますわ。
