「「機械」するココロ」スチームボーイ pearlboyfriendさんの映画レビュー(感想・評価)
「機械」するココロ
今回は親しい友人に薦められて、レンタル店へ。
見れば、2004年公開とあるではないか。公開当時の自分の年齢が、主人公レイに近かったこともあって、映像のメカニックさに興奮しながらも、どこか懐かしさも感じつつの鑑賞であった。
予告にもあったように、かなりの時間とお金をつぎ込んでいるだけあって、映像のクオリティは最高級のものだ。特にボイラーから吹き出す蒸気(スチーム)の動きはまるで実写のよう。ただテレビ画面では暗い部分が見えづらかったのと、明らかにCGを使用したなってところが散見され、少々残念だったが。
映像、音楽、グラフィック、声優はかなりのレベルではあるのだが、いかんせんストーリーの展開がその分、雑に感じてしまった。もう少し冒頭のほうで、スチームボールが何なのか、なぜ大切なものなのかを明らかにしてほしかった。訳もわからんうちに車?が家につっこみ、誘拐され、スチームタワーへ・・・?前半は、少し置いてけぼりをくらった感じだった。
本作のテーマというかミソといえば、祖父と父親との間の、「科学」に対する向き合い方の齟齬だろう。中盤から後半にかけてそのすれ違いがいつしかスチームタワー始動へと結びついていくのだろうが、なんだか鉄砲合戦が始まってしまったおかげで、本題がかすんでしまった感じがする。もちろん、映像としては申し分のない迫力だった。
エンディングの「絵」で、「おっ!」とさせられた。少年のその後もしっかり描かれていて、ほっと一安心した。ちゃんと「お約束」をわきまえている証拠である。エンディングの途中で、空をパラシュートみたいなやつで覆い尽くされ、兵士らしき人が銃を構えている横で、電球が灯っているシーン。これは「深い」。かくして、産業革命において絶対的地位を確立した科学技術は、おじいちゃんが危惧していた通り、戦争の兵器、他者を傷つけるための道具として利用されることになってしまったのだ。しかし同時に、ランプのように文化に灯りをともすこともできるのだと。「科学」は、いかようにでも利用できるというメッセージを読み取ることができるのだ。