「今まで見てきた法廷モノの価値観が覆る、これが法廷のリアル」それでもボクはやってない 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
今まで見てきた法廷モノの価値観が覆る、これが法廷のリアル
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劇場公開されたのが2007年1月。
見た時点で年間ベストワンだと確信した。
(7月に公開された「河童のクゥと夏休み」も良かったが)
とにかく、今まで見てきた法廷モノの映画やドラマは何だったんだ!?と思った。脳天をガツンとやられ、衝撃を受けた。
法廷モノのよくあるパターンは、正義感溢れる弁護士もしくは検事が悪事や不正を暴き、正義を掴み取る…というモノ。サスペンスたっぷりで、法廷モノにハズレ無し!とさえ思っていた。
しかし、本作で描かれていた事は全然違った。
法廷には善も悪も無く、ただ裁かれる者と裁く者だけの無情な世界。
全ての物事は淡々と進み、被告には人権もプライバシーも無く、弁護士も検事も大声を上げて正義を訴えたりせず、裁判長も小槌を叩いたりせず、被害者(この場合は痴漢を受けた女子高生)は囲いで覆われた証言台でボソボソと話す。
こんな法廷劇は見た事なく、新鮮と言うより、これが法廷のリアルなのだろう。
お陰でイイか悪いか、他の法廷モノをまともに見れなくなってしまった。どうしても本作と比べてしまう。
キムタクの「HERO」なんて漫画。「ダークナイト」で証人席のマフィアが突然拳銃を取り出し、それをハービー・デントが殴って奪い取るシーンさえ失笑しそうになった。
徹底的に取材・調査したであろう脚本の力。
展開は淡々と進むが、緊張感はたっぷり、思いのほかテンポも良く、エンターテイメント性も抜群。
役者からも名演を引き出し、全てを見事にまとめ上げた周防正行監督の手腕に感服。
ラスト、結局主人公は有罪となるが、そこにこの映画を作った意義を感じた。
正真正銘の傑作。
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