「【”余りに非情な国家の命令。”今作は、長年隠蔽されてきた事実に対し、スポット・ライトを当て韓国民に史実を伝え、社会現象にまで発展した意義深い作品。韓国映画界の矜持を感じる作品でもある。】」シルミド SILMIDO NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”余りに非情な国家の命令。”今作は、長年隠蔽されてきた事実に対し、スポット・ライトを当て韓国民に史実を伝え、社会現象にまで発展した意義深い作品。韓国映画界の矜持を感じる作品でもある。】
■1968年、北朝鮮による韓国大統領府襲撃未遂事件をきっかけに、韓国政府を統べていた朴大統領はその報復として死刑囚ら31人の男たちをシルミドという無人島に集め、極秘に金日成暗殺指令を下す。
3年もの長きに亘り、過酷過ぎる訓練を受けた彼らは、684特殊部隊として、金日成暗殺に向かおうとするのだが・・。
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・今作は、実際の史実シルミド事件を脚色した作品である。映画として魅せるために、脚色した部分もあるようだが・・。
■そして、この事実は朴、全、盧泰愚と続いた軍事政権では、長く隠蔽されていた。韓国にとっては負の歴史だからである。だが、民主化が進む中で、カン・ウソク監督はこの負の歴史を映画化することを決意する。
それにしても、このテーマを、よくぞ映画化したモノである。
・朴大統領の意向を汲んだ政府は、犯罪者集団の男達に”金日成暗殺に成功すれば、恩赦をし、名誉回復させる・・”と言い含め、シルミド(実尾島)で3年にも亘る訓練を施す。
ー 彼らを訓練するチェ空軍准尉(アン・ソンギ)を頭とする組織の男達への訓練は苛烈を極め、死者も出る。だが、チェ准尉達は、”国家のために”元犯罪者たちを、暗殺者集団に鍛え上げて行く。そんな中、教える側、教えられる側に少しづつ絆が生まれ始めるが・・。-
◆嫌いだが、作品構成上は必要と思ったシーン。
・隊員2人が、干潮時、隣の島に渡り、女性に乱暴するシーン。隊員たちの犯罪歴を匂わせつつ、取り囲まれ一人はナイフで、残りの一人は”連帯責任”と称して、684部隊員達が拷問されるシーンを見せつけられる。そんな中、カン・インチャン(ソル・ギョング)は拷問が終わった後に、男を棒で殴り殺す。
・3年の間に、韓国政府の考えが、徐々に融和政策に変わって行くシーン。そして、チェ空軍准尉(アン・ソンギ)に出された余りに過酷な指示。チェは必死に抗うが・・。
ー 島に戻ったチェが、それまで資質を見抜き可愛がってきた、カン・インチャンと対峙するシーンは、余りに哀しい。チェは、自らの力が及ばなかった事を悔い、カンに対し、”俺を撃て。撃たないなら、お前を殺す”と言いながらもカンに対して、銃を向けない。カンもチェを撃てない。そして、チェは銃で自らの頭を撃ち抜く。カンが、韓国政府への怒りを増幅させたシーンである。-
<そして、彼らは自らの教官たちを殺し、大統領に会いにバスジャックして、ソウルへ向かう。バスに向けられた銃口。そして、容赦ない射撃。
634部隊の隊員たちは”人質を逃がした後に”手榴弾で自決する。
今作は、長年隠蔽されてきた事実に対し、カン・ウソク監督がスポット・ライトを当て韓国民に史実を伝え、社会現象にまで発展した、意義深い作品である。>