劇場公開日 2006年7月8日

「手におえなくなった者は焼いてしまえ!魔女狩りにとどまらず、痛烈なブッシュ批判なのではないかと思えるくらいの社会派SF映画。」サイレントヒル kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0手におえなくなった者は焼いてしまえ!魔女狩りにとどまらず、痛烈なブッシュ批判なのではないかと思えるくらいの社会派SF映画。

2019年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

 だと思っていたら、ゲームが原作であるホラー映画だったらしい。三葉虫みたいな虫以外はそれほど怖くない。元がゲームなだけに、主人公のローズは娘を探し出したい一心で行動する設定だし、彼女に共感すればするほど怖くなくなってくるのです。だけど、公式サイトはちょっと怖かった・・・

 廃墟と化したサイレントヒルという町へ入ったローズ(ラダ・ミッチェル)と娘シャロン(ジョデル・フェルランド)だったが、忽然と姿を消してしまったシャロン。そして女性警官シビル・ベネット(ローリー・ホールデン)も加わって、シャロンの行方を追ってこのゴーストタウンを彷徨い歩く。夫であるクリフ(ショーン・ビーン)は妻の後を辿り、サイレントヒルへ入ろうとするが、人間の気配すら感じられない町には手掛かりすらつかめなかった・・・

 序盤において、彼女たち3人が30年前の同じ場所へタイムスリップしていて、ショーン・ビーンと他の男衆はわけもわからず空回りするばかり。偶然にも同じ場所にいた彼が「匂いが・・・」などとつぶやくのですが、30年も残り香があるなんて、よほど強烈な匂いだったのかもしれません(違うかも)。死んでしまったらタイムパラドクスが起きてしまうだろう?といった不安定な世界観ではありましたが、どちらかというとパラレルワールドのような雰囲気なので、彼の直感は多分気のせいだったと思ったほうがよさそうです。

 恐怖感が薄れたのはこのタイムパラドクスのせいかもしれませんが、これは終盤までわからなくしたほうが良かったのでしょう。もしかすると主人公の夢の中なのではないかと思わせる浮遊感とか、現実離れしたCG効果も原因だったかもしれません。結局、憎き相手はクリスタベラだ!などと社会派映画的昂揚感によって、すでにホラー映画であるということを忘れさせてくれたのです。さすがにでかい包丁は怖かったけど・・・

 魔女狩りにあったダリアの娘アレッサ・ギレスピー。彼女がシャロンと瓜二つなものだから、ローズは怖いながらも必死で守ろうとする展開。しかも、焼かれた姿が痛々しくて、死神と自ら呼ぶアレッサだけが復活。そしてシャロンは彼女の良心として生まれたのだ。

 途中まではたいしたことなかったけど、♀マーク四つのカルト教団のおかげで徐々に加点・・・そして秀逸なラストシーンでもう一つ加点。匂いとともに生きていくことになったショーン・ビーンに乾杯。

【追記:2020.7】
 サイレントヒルの住民たちに黒人が一人もいないことに気づきました。ウェスト・バージニアという南部という土地柄もあると思うのですが、こうなってくると宗教団体もKKKをイメージしていたのかもしれません。恐ろしい怪物だってKKKのフードみたいだし・・・

kossy