劇場公開日 2006年7月8日

「世界観がとても良い」サイレントヒル クラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 世界観がとても良い

2025年12月11日
iPhoneアプリから投稿

原作のゲームは過去数日プレイした事がある程度であり、勿論全クリなんて夢のまた夢で終わってしまった程度である為、ほとんど映画作品としての評価になる。
「バイオハザード」と並ぶヒット作となっただけあり、実写化に当たっては相当プレッシャーがかかりそうだが、製作費の倍近い興行成績であればホラー作品としては成功した方だろう。"本格的なホラーゲーム"の代名詞である原作を踏襲しつつ、126分の中に無理なくギュッと詰め込んだ印象だ。本作の称賛すべき点は世界観と作風が芸術的なほどピッタリと合っているというところだろう。ゴーストタウン化したサイレントヒルという喪失感漂う雰囲気に不気味な佇まい、地下の炭鉱が今でも燃え続けている為、基本的には人の出入りは無く、入ったとしてもマスク必須の危険地帯である。これは劇場版だけでは無く原作にも当てはまるが、2011年の震災で発生した原発事故により、今も福島の一部の地域は立ち入りが制限されているが、今考えると思い返してしまう設定である。

異形のクリーチャーらは流石ハリウッドクオリティで良く再現されており、怖いが1つのキャラクターとしてのインパクトを残してくれている。その中で次第に明かされていく事実は残酷であり、いかにしてサイレントヒルが呪われたのかが完全未プレイの観客にも分かり易いように描かれている。やはり、子を持つ母親は強し。警察を振り払い、封鎖されたゲートを車で蹴散らし、最後はラスボスを連れての登場である。後半はこれでもかとスッキリする事間違いなしであり、でかした!と思うが、しんみりと幕を下ろすのも情緒的で良い。

数日プレイしただけの自分では気が付かなかったものの、ゲーム原作と同じBGMを使用するなど、ファンとしては「良くぞここまで!」と思えるのだろう。原作との相違点も幾つかあり、原作では行方不明の娘を探すのは父親だったが、劇場版ではラダ・ミッチェル演じる母親である。また、時折やってくる"呪いタイム"の前にサイレンが鳴り響くという設定も追加されている。その後に訪れる"血と錆の世界"の表現も良い。ゲーム原作の作品で中々往年のファンと新規のファンを同時に掴むのは難しい物だが、本作はその中でも悪い話を聞かない、数少ない成功例だと言えよう。

クラ