「アイデア満載の意欲作」スキャナーズ 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
アイデア満載の意欲作
40年前の映画だが、それなりに面白く鑑賞できるのは、名作のひとつと言っていいのだろうと思う。クローネンバーグ監督の作品では1987年の「ザ・フライ」が凄く印象に残っている。ある装置から数メートル離れた別の装置へのテレポートを成功させた学者の話で、ジェフ・ゴールドブラムの怪演が思い出される。テレポート寸前に装置に侵入したハエと遺伝子レベルで合体してしまうというアイデアが秀逸だった。
本作品も人体の変化を扱っていて、テレパシーによって他者の意識が勝手に頭に入ってくるだけでなく、テレパスの側からも信号を送ることができるというアイデアだ。それによって相手のバイタルを変化させることができる。流石に頭が破裂するのは少しやりすぎかもしれないが、映画的には衝撃のシーンが必要な訳で、そのあたりはクローネンバーグ監督がよく心得ているようだ。加えて監督は、人体自然発火現象も念頭に置いて作品を作ったように思える。
ストーリーは常に予想を裏切る形で、より過激な方、より悲惨な方へ進んでいく。各シーンはアイデアの連続である。撮影も見事だが、特殊メイクも凄い。CGよりもずっと迫力を感じるのは当方だけだろうか。
ラストシーンはこれで終わるのか?という続編の予感を匂わせる格好だが、完結しているようにも受け取れる。そのもやもやが本作品の印象を強くしている。そういう狙いもあってのラストシーンかもしれない。まさにアイデア満載の意欲作であったというのが本作品の妥当な評価だろう。続編は9年後に製作されたが、クローネンバーグ自身はかかわらなかった。当方も続編は観ることはないと思う。
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