「 そうはならんやろ、とツッコむ隙すら与えない畳み掛けるギャグでお馴...」少林サッカー とびこがれさんの映画レビュー(感想・評価)
そうはならんやろ、とツッコむ隙すら与えない畳み掛けるギャグでお馴...
そうはならんやろ、とツッコむ隙すら与えない畳み掛けるギャグでお馴染みの本作。全力でやりきったらサブくない、ということを教えてくれる映画です。
数年ぶりに鑑賞しましたがやっぱり笑える。屈指の名シーンが指の数より多いと思います。
まずムイちゃんが太極拳を駆使して万頭をつくるシーンですね。流れる手さばきで生地をこねていきます。生地の中央には陰陽太極図が描かれる場面も。同じくチャウ・シンチー監督の『カンフーハッスル』でも太極拳のシーンで登場したと思います。どうやら太極拳を極めるとああいう紋様が浮かび上がるようですね。
お菓子作りみたいな普通のことを超人の技術でやるというようなギャグは、剣士が空中で魚を捌いて落下すると寿司になっている、とかと同種でしょうか。もちろん超人サッカーも同じ原理の笑いだと思いますが。
何かの技術がこちらの予想を遥かに上回る域に達していると人は笑いますよね。友達とカラオケ行ったらやたら上手いとか、キャベツのみじん切りがめちゃくちゃ速いとか。こういうのは、裏側に膨大な時間を想像させる深さに肝があるんですよね。めっちゃ上手いということはそれだけ練習を積み重ねたということで、そこまで想像して人は笑うんです。何に時間かけてんだよ!最高か!って。とはいえこの映画、別にサッカーが超上手いわけではないので全然当てはまりませんね。
そしてクライマックスの決勝シーン。この映画笑いの爆発ポイントを序盤から出し惜しみせず入れてきてるのに、ちゃんとそれ以上の傑作シーンを終盤に用意してるのがすごい。情熱が尽きたり体力が切れたりで失速しないんですね。特にこんなギャグ映画で。ムイちゃんのパスからシンがゴールを決めるシーン。竜巻を巻き起こして選手もゴールも吹き飛ばしていくシーンは、BGMもなく独特の静けさのなか風の轟音だけが響いていて、今回も呼吸困難になるほど笑いました。
このチャウ・シンチー監督、映画の構想は前々から持っていて、それを表現できるCGの発達を待っていたとコメントしたそうな。CGで遊ぶのがめちゃくちゃ楽しかったんでしょう、伝わってきますね。
本当に名作です。