「「兄だった」 千尋の母は千尋に冷たい。父親(夫)には甘えても、一度...」千と千尋の神隠し ISSIさんの映画レビュー(感想・評価)
「兄だった」 千尋の母は千尋に冷たい。父親(夫)には甘えても、一度...
「兄だった」
千尋の母は千尋に冷たい。父親(夫)には甘えても、一度も千尋を見る事すらない。声も命令口調で冷たい。誰もが気付くのに理由は語られない。
ハクは「そなたを小さい頃から知っている」と言う。名前も忘れるのに「お前の事だけは憶えていた」と言う。
ハクはまだ神になれていない人である。映画の設定で100%神なら夜になって見えるようになる為、昼から見える彼は人の部分があるのである。
川に溺れた千尋は上半身裸であるが、川の中に何かを採ろうとする手はシャツを着ている。だからそれは、靴を拾おうとする千尋の手ではない。千尋を助けようとしている「子供の手」である。神の手ではない。
でも事件は千尋の記憶ではない。千尋自身は「自分は川に溺れた事がある」と、聞いた記憶である。
ハクを助けようとする千尋に、釜爺が「愛だ!」と言う。
宮崎駿は簡単に「愛」と言う言葉を使わない。宮崎アニメの文法には無い。
宮崎駿はこの映画で、銀河鉄道の夜のテーマ「誰かが自分を生かしてくれた」と言う事をやれた。と言っていたそうである。
ハクは千尋の兄である。
彼は、溺れた千尋を助けて 川で溺れ死んでしまったのである。それで彼は その川の守り神になれたのである。元から神なら「そなたを小さい頃から知っている」と言うのは少しずれている。
母は、かわいい男前の 聡明な息子の命を奪った 無気力な娘、千尋のせいでは無いと分かっているが、死んだ長男の為に 娘と向かい合えないままなのである。
そして両親は「千尋に兄がいて 自分を助けて死んだ事」を まだ千尋に伝えていないのである。
釜爺の言う愛とは「兄弟愛」の事である。
ハクが、千尋を「知っていた」と言う以上に千尋を、構い助け続ける理由もうなずける。
その事故が原因なのか、この家族は少しずつ歯車が狂っている。今回の移転・引っ越しも関係しているかもしれない。
これが、この映画のテーマ「誰かが自分を生かしてくれた」なのである。(岡田斗司夫のYouTubeより)
この話を聞いてかなり多くの歯車が噛み合った感じがする。
気付かなかった。兄って気付かないよねえ。
この解かり難さは、実はこの映画は宮崎駿が自分の為に作った、ほぼプラベートフィルムなんだそうだ。油屋(湯屋)はジブリだそうだ。もののけ姫の大ヒットで、宮崎駿はヒットを狙うのでない もっと自分の作りたいモノを!と思ったらしい。でもそれが興行収入1位になり、賞を総取りした。金熊賞を取って一番戸惑っていたのは氏である。変なコメントをしていたのを憶えている。
宮崎駿は人類が思っている以上に化け物である事もさることながら、
見る側も、分からなくても 何か感じ取れる 何かを持っている事実も興味深い。