初恋のきた道 : 映画評論・批評
2000年12月1日更新
2000年12月2日よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
純情可憐一直線!チャン・ツィイーデビュー作
「グリーン・デスティニー」のお姫さま剣士役でにわかに注目されたチャン・ツィイーのデビュー作。華麗なるワイヤーワークとは打って変わって、この映画では中国の寒村に住む少女のいじらしい恋心を切々と訴える。
父の葬式で故郷に戻った息子が、村で初めての自由恋愛だったという父母のなれそめを回想する。映画はここからカラーになり、ピンクの綿入れと赤い襟巻きの若き日の母(チャン・ツィイー)は、寒村に咲く一輪の花。都会からやってきた教師に恋をした彼女は、得意のお料理で彼の心をつかもうとする。教師が町に戻ると告げにくると、彼女は作った餃子を一口でも食べてもらおうと、彼を乗せた馬車を追って、走る、走る。馬車は過ぎ去り、少女は転び、餃子は地面に……ほとんどお笑い寸前だが、こんなに一途になれたらなぁと、現代には失われた純粋さが懐かしくもなる。
全編、チャン・ツィイーの可憐な笑顔、つぶらな瞳のアップの連続。巨匠チャン・ イーモウのアイドル映画(これもまた懐かしい)と思えなくもないが、前作「あの子を探して」同様、このヒロインも、こうと決めたら思いは貫く。コン・リーといい、彼女たちといい、チャン・イーモウって強い女が好きなんですね。
(田畑裕美)