プロフェシー : 映画評論・批評
2002年10月1日更新
2002年10月2日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー
理解不能な怪現象を描くペリントン監督の演出が秀逸
心霊や超能力、UFOといった超自然現象は、科学では説明がつかずとも、感情的には受け入れられる。が、「プロフェシー」が描く奇怪な事象はまったく理解できない。66年11月から約1年にわたり、アメリカの田舎町でモスマン(蛾男)と呼ばれた怪物が出現した。この実際に起きた事件をもとに、映画は、理解不能な現象を観る者に体感させる。緊張を強いる斬新な映像とリチャード・ギアらの熱演で、かつてない混乱と恐怖に包まれるのだ。
モスマンの姿を見せないペリントン監督の演出が秀逸。与えられる情報は、赤い目と翼を持つという目撃談と、天使や悪魔、妖精ともつかぬ姿を描いた目撃スケッチのみ。MTV出身の監督は、目や翼を連想させる映像をいたるところに潜ませ、不気味なノイズとともに何者かの存在を潜在意識に刷り込んでいく。その上で災厄に関する予言を主人公らに与え、古代から語りつがれてきた予言者の存在を解体していく。そして、未来の惨事を知ってしまった者たちの苦悩を浮き彫りにする。
しかし、謎にはいっさい答えない。大きな橋が落ちる壮絶な事故を生々しく体験させて突き放す。人間がいかに小さな存在であるかを、身をもって思い知らされるのだ。
(山口直樹)