劇場公開日 2002年2月2日

「【”異常なる性癖を持つ美しき女性ピアニストの密やかなる愉しみと、深い深い哀しみ・・。”イザべル・ユペールのど根性女優魂に驚く、ミヒャエル・ハネケ節全開作である。】」ピアニスト NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”異常なる性癖を持つ美しき女性ピアニストの密やかなる愉しみと、深い深い哀しみ・・。”イザべル・ユペールのど根性女優魂に驚く、ミヒャエル・ハネケ節全開作である。】

2023年1月22日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

難しい

ー 今作は、ハッキリ書くが、観ていて不快なシーンが多い。
  だが、後半になり、イザべル・ユペール演じるエリカの深い深い哀しみが露わになって来るシーンを見ると、ある意味非常に印象的な作品になって来るのである。
  ミヒャエル・ハネケ監督の仕掛けた罠に、マンマと引っかかっているのである・・。-

◆感想<Caution!  内容に触れています。>

・余りにも有名な、エリカを愛するイケメン学生ピアニスト、ワルター君が女性WCに乱入し、エリカを抱きしめるも、彼女が取る異様な行動に驚く。
ー あの焦らし方は、男にとってはヒジョーにツライと思う。
  ワルターを演じた若きイケメン俳優さん、大変だっただろうなあ・・。-

・エリカが教える神経質であがり症のアンナに対して、エリカが行った異様なる行為。
ー ピアニストには、指がとても大切な事は十分に分かっての行為であろう。
  この時点で、”エリカはサディストではないか。”と思ってしまう。
  既に、ミヒャエル・ハネケ監督の罠に掛かっているのである。-

・エリカが、平気な顔で一人エロビデオ屋に行って、個室で前の男性客が残したティッシュを鼻にあて、匂いを嗅いでいるシーン。
ー いやいやいやいや・・。-

・徐々に、エリカの本当の性的嗜好が明らかになっていく過程の描き方も凄い。ワルター君に対し、手紙を渡し、迫って来る彼に、無理やりその手紙を読ませるシーン。
 で、ワルター君、気分を害して退出。
ー そりゃそうだろう。愛する女性が書いた手紙の内容が、あんなマゾヒスティックなモノであれば、男だったら冷めます・・。-

・だが、ワルター君は、エリカにアイスホッケー中に呼び出されて、アンナ事をされて、御立腹。
で、彼女が手紙に書いた”要求事項”を着実に実行する。
エリカの異常なる性癖を生み出したと思われる母親を部屋に閉じ込めて・・。
ー 異常なる人の妄想を実行したら、犯罪です・・。-

<ラストシーンもショッキングだが、エリカの深い哀しみが分かるのである。
 過干渉な母親と長年同居していた故か、エリカに生じた異常なる性癖と深い哀しみ。
 そして、無音のエンドロール・・。
 鑑賞後の後味が非常に悪い作品である。(褒めてます・・。)>

NOBU
きりんさんのコメント
2023年9月4日

NOBUさんこんばんは
「フジコ・ヘミングの時間」への共感とコメントありがとうございました。

僕はNOBUさんの「物作り映画」にかけるレビューがいつも大好きで読ませて頂いています。
レストランの厨房ものや、ファッションデザイナー映画の工房のシーンなど。チーム全体でのスタッフ作業やそこでの躓き、足を引っ張る困り者やシステム回復への苦労の様子など、お仕事柄、そういう映画は直に響いておられるんでしょうね!

段取り、育成、楽しい職場。これが僕が三度のメシより好きなものなんです。
だから「パラサイト 半地下の家族」の拙レビューで、あの時は本当に怒ってくださって、考えてくださって、僕はどれだけ嬉しかったか。
改めてお礼を申し上げたくて。

残暑、お疲れが出ませんように、
長文失礼しました
きりん

きりん