劇場公開日 2002年2月2日

ピアニスト : 映画評論・批評

2001年12月27日更新

2002年2月2日よりシネスイッチ銀座にてロードショー

制度と欲望、支配と服従が、入り組み、そして転倒する

キューブリックは、マチズモ(男性優位主義)がいかに制度化され、男たちの本能や欲望を規定し、そして女の前にそのもろさを露呈するかを描いた。挑発的なスタイルで異彩を放つハネケ監督の新作では、女を主人公にそれと似た主題が掘り下げられていく。

厳格な母親のもと、すべてを捨ててピアノだけに打ち込んできたヒロインは、精神的には男である。音楽界のマチズモ的な制度が彼女の欲望を規定しているのだ。彼女は男として、ポルノ・ショップの個室を利用し、男女のカーセックスを覗いて興奮を覚える。自分の肉体を嫌悪し、密かに傷つける。ハネケは、そんな彼女の二重生活や初めての恋愛体験を、独特のユーモアも交えた繊細で大胆なスタイルで描き、性と制度の相克を浮き彫りにする。

ヒロインを想う若者が弾くピアノは、彼女のなかの女を揺り動かし、彼女は化粧もするようになる。しかし肉体で愛し合うことは音楽に感応することとは違う。若者に身を委ねる以前に、彼女のなかの男が女としての肉体を縛る。ふたりは、支配と服従の関係が複雑に入り組み、皮肉な転倒を見せる泥沼に引きずり込まれ、ピアニスト=男の死を象徴する残酷で美しいラストが鮮烈な印象を残すのだ。

(大場正明)

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