「悪魔が神に」パフューム ある人殺しの物語 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
悪魔が神に
クリックして本文を読む
あまり馴染みのないドイツ映画。中世のヨーロッパを舞台として、その貴族の華やかな暮らしの陰に隠れた、うす汚れて、悪臭までもが匂い立つ庶民の暮らしとを、タイアップした映像が印象的。
汚い魚市場で生み捨てられた主人公・ジャン。生まれた時から、超人的な臭覚を備え、成長するにしたがってその力も増し、周りの人々は、彼を異端児扱いしていく中で、孤独な人生を送っていた。しかしある日、美しい女性の体から匂い立つ香りに、異常な興味を持つようになる。
そして、女性を拉致して殺し、体から染み出る香りを抽出しようと、煮詰めて蒸留したり、油を塗り込んで染み込ませたりし、次々とサイコパスとなって殺戮を繰り返す。そして、最後の一人となる貴族の美しい娘を殺し、香りを抽出することに成功し、彼が願うパフュームを作り出す。そこで、警察に捕まり、死刑台へと送られる。
しかし、その後が予想外の展開。女性の敵としてのサイコパスから、一気に神々しい神となっていくシーンは、イエス・キリストの『十戒』を想起するようなシーンでもあった。死刑囚の男に、人々がひれ伏し、崇め、そこに集った誰もが、服を脱ぎ出し、相手かまわず愛し合うシーンは、あまりに異常で、その変容振りには、少し無理があるとも感じた。
本作全編を通して、当時のヨーロッパの街や生活、服装などが、非情にリアルに再現されており、ハリウッド映画では多分描かれない描写だと感じた。この時代が、決して自分達が思い浮かべているような、美しい時代では無かったことを、改めて印象付けた。
コメントする