パトリオット : 映画評論・批評
2000年8月15日更新
2000年9月23日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
エメリッヒ監督、汚名返上なるか?
祝、ニュースター誕生! そう謳い上げずにいられないメルギブの長男役のヒース・レジャー君こそ、この話題作の最大の収穫。いや、派手なSF戦争スペクタクルはお得意でも人間は描けないというイメージとは裏腹に、リアルでいながら詩的な戦闘シーンで盛り上げるこの作品は、確かにエメリッヒにとって初の秀作。メルギブも、「ブレイブハート」再びとばかりに闘う男の美学を堪能させてくれる。
でも、この独立戦争が盛り上がるのは、あくまで家族のドラマに仕立てたからこそ。父として兵士として偉大すぎる父の真の強さを、まっすぐな長男の反発と尊敬を交えて描くので、アメリカ人じゃなくても思わず胸が熱くなるんである。戦場で逞しく成長しながらも、笑顔に甘さをのぞかせるヒース君のオーラは、前評判どおり。「テルマ&ルイーズ」でブラッド・ピットが売りだしたときより断然光っている彼の次回作が、待ち遠しいぞ。
おまけに、この手のアクション大作は悪役が冴えてこそという条件も見事にクリア。非道を尽くす英軍大佐役ジェイソン・アイザックスの切れ味は、エメリッヒ作品とは思えない陰影豊かな撮影とともに、来年のオスカー有力候補か? エメリッヒ作品だからと、食わず嫌いしちゃ駄目よ。
(杉谷伸子)