オルフェ : 映画評論・批評
2000年8月1日更新
2000年9月9日よりシネマライズほかにてロードショー
情熱的なブラジル音楽が身も心も解き放つ
ブラジル本国で大ヒットとなった、職人監督カルロス・ジエギスの新作「オルフェ」は美男美女が歌い踊り、悲恋の物語が盛り上がる、典型的な娯楽映画の超大作である。この映画で特筆すべきなのは、ブラジリアン・ポップスを代表する大物、カエターノ・ベローゾが音楽監督を務め、ボサノバ、サンバとロック、ヒップホップといった今と昔の音楽の混合を、彼らしいアレンジで行っていること。世界の音楽ファンが陶酔した空間を、ついに映画ファンも味わうことができるのだ圧巻はなんといっても、ラスト近くのリオのカーニバルの場面。このシーンのためだけにも、劇場に足を運んでもよさそうな、カラフルなスペクタクルなシーンである。今までハリウッド映画をみなれてきたファンにとって、異国の映画・音楽文化のユニークな発達ぶりは目を見張るに違いない。多くの (日本の) 先に見ておられる方々は「ムトゥ 踊るマハラジャ」との比較をされているが、ピュアな映画娯楽への欲求が、恥ずかしがらずに出せる国というのは、うらやましい限りである、としか言い様がない。キメにキメられた絢爛豪華で贅沢なラブ・ストーリーを堪能したい方には、大推薦である。
(馬場敏裕)