オーシャン・オブ・ファイヤー : 映画評論・批評
2004年4月16日更新
2004年4月17日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー
ジョー・ジョンストン監督は娯楽映画の本道を行く
ジョー・ジョンストン監督といえばデビュー作の「ミクロ・キッズ」から、「ロケッティア」「ジュマンジ」「ジュラシック・パークIII」と、いかにもILMの特撮マン出身らしいVFX映画がフィルモグラフィーに並ぶが、マニアを喜ばすツボを押さえた演出ばかりでなく、緩急自在な語り口に加え、ロケット少年たちの夢と成長を描いた「遠い空の向こうに」のようなエモーショナルな表現力にも富み、いまや、エンターテインメント映画の王道をゆく、得難い存在といえる。
その彼の最新作は、邦題になった“オーシャン・オブ・ファイアー”、灼熱地獄と化すアラビア砂漠を、人馬一体となって耐え抜く19世紀末のサバイバル・レースを中心に描くアクション大作で、西部劇(「ラスト・サムライ」との共通点あり)やインディ・ジョーンズばりのアドベンチャーなど、見所てんこ盛り。そうした“陽”の部分に加え、ウーンデッド・ニーの大虐殺の悲劇、混血児の主人公とムスタングの愛馬の宿命といった、実話に基づく要素が“陰”を成し、ストーリーにドラマチックな深みを与えて、感動のラストへとなだれ込む。能天気な大作とは一線を画す、娯楽映画の本道を堪能できる。
(高橋良平)