「凄い戦争映画」ノー・マンズ・ランド ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
凄い戦争映画
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「戦争って何でするの?」と聞かれてまともに答えられる人は多くないかもしれません。私もその一人です。民族が違うからとか歴史的にとかお金儲けするためとか。
この作品はボスニア紛争が舞台となっています。しかし、作品としては歴史や場所や背景を問うものではありません。世界中で日常的に行われている「戦争」が普遍的であるという作りになっています。
だから、登場人物も決して特別な人間ではなく、特別な人間としても描かれていません。
敵同士のチキとニノは、何故戦っているのかも分からないごく普通の人として、地雷の上に横たわるだけのツェラは手も足も出ない動けない弱者として、国防軍の指揮官は無責任な支配層として、その部下は良心はあるけど上層部の指示決定に忠実な従う人間として、そしてマスコミはネタを探しているだけの傍観者としてこの戦争に関わります。
最終的にチキとニノは死に、ツェラは「助ける手立てがない」と国防軍に地雷の上に置きざりにされます。私達が戦争で死んでいく人を見てみぬふりするのとまるで同じ。
「ノーマンズ・ランド」は鏡の様に戦争や社会の縮図を写しだした恐ろしいほど凄い映画です。
「何で戦争は無くならない?」
こう問いかけられた場合、この作品を観たから答えられることがあります。
私もまた一人の「傍観者」として存在しているのではないか。本当は動けないツェラと同じ運命にあるのに。そして、ほとんどの人もまた、ツェラではなく「傍観者」として存在しているのではないか。ツェラはそう、映画上の人物だと思っているから。
「殺戮に直面したら傍観も加勢と同じ」
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