誰も知らないのレビュー・感想・評価
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問題を知り、何かを感じとり、何かが自分の中で変わる それをやるのは観客たる私達なのだ
こんな怖い映画はなかった
いままで観た中で一番怖くてトラウマになった映画は野村芳太郎監督の名作「鬼畜」だが、それをも上回った
恐ろしく、そして胸糞がわるい
しかし、不思議に涙がでない
明のように心が麻痺してしまった
観終わってしばらく呆然として何も考えれずにいて、寝床に入っても寝付かれない
ゆきちゃんの可愛い見上げる顔と大きな目が消えなかった
その時になってやっと泣いた
鬼畜は1978年の映画
不倫相手に産ませた三人の子供を父がそれぞれ殺したり、捨てたりする物語だった
家族ゲームは1983年の映画
核家族化した日本人の家族は家族の役割を演じるゲームと化しつつあることを描いた
台風クラブは1985年の映画
それでは最早両親すら登場しなかった
ネグレクトされている少年も登場した
核家族は更にすすんで、バラバラの人間が一つの家を共有するだけになり、子供達は子供達だけで台風の夜を過ごすのだ
本作の元になった実際の事件は1988年に起こった
それを予告していたのだ
この事件は台風クラブでの予言を遥かに超えていた
そして本作はその事件を扱って2004年に公開されたのだ
しかし現実は本作をよりも更に超えて来た
2010年大阪2児餓死事件を覚えている人も多いだろう
親と子がバラバラになるだけではない
本作のゆきちゃんと同じ3歳女児と、それより小さな1歳9ヶ月男児の二人をマンションに鍵をかけ閉じ込めて1ヵ月帰らなかったのだ
これは明らかに殺意をもった子供との関係だ
この事件は2013年に「子宮に沈める」という映画になっているという
恐ろしくてとても観る勇気がない
そして去年2019年には野田小4女児虐待事件が起こった
小4女児が両親の虐待が原因で死亡した事件
女子は反省文をかかされ、子供の字で「許して下さい」と書いてあったという
学校の先生も彼女の虐待の訴えを真面目に取り合わなかったのだ
見殺しにしたのだ
本作では「誰も知らない」だった
無関心でいた
それが最早今では親が子供を殺す、それを先生は「知って」いて、それでも助けない社会にまで来てしまったのだ
これこそ「鬼畜」ではないだろうか?
今私達の社会は鬼畜の社会になり果ててしまった
自分の住む同じ町内、同じマンション、同じ小学校のどこかで同様の事件がまた繰り返されるかもしれないのだ
友人の家はしつけが厳しいが大丈夫なのか?
隣の家から勉強しなさい!との金切り声がするが大丈夫なのか?
余所の家の話だけではない
我が家の小さな子供達もやがて大きくなり独立を果たして、いつしか結婚もして出産もするだろう
果たしてその時娘は、息子は、その子供を虐待をしたりしないだろうか?
いや下手をすると自分がそうなりはしないか?
不安がぐるぐると渦巻く
遠いどこかの異常な事件では無く、いつすぐ近くで、いや自分に直接関わるかも知れない時代なのだ
本作の監督の視線はその現実の行方を見つめる
批判も怒りも主張もない
ただ本当に起こっている、放置出来ない問題を見つめる
目をそらさずに見つめる
そこには正義を振りかざしたりする姿勢はない
問題を知り、何かを感じとり、何かが自分の中で変わる
それをやるのは観客たる私達なのだ
素晴らしい傑作で、世界的映画賞が与えられて当然だ
みんなが知っている
子供4人の周囲には、有名な俳優の人から無名の俳優まで様々な登場人物が登場している。
この映画を観ている、自分や全ての観客がこの周りの大人として当てはまり、心に深く突き刺さる。
監督のコメントでは、善悪を描かず、それぞれの人生に落とし込めればとあるが、
自分であったらどうするか考えざる負えない作りになっている。
主人公の声変わりや反抗期など、子供時代の細かい所まで描かれており、自分の子供の頃の記憶も思い返される。
人ごとではない、大人全員みなくては?と思えた作品
これが是枝監督の原点か
なるほど。スター監督になってからこの出世作を観てしまったが、ドキュメンタリー出身のフィルメイカーとして、役者や時代感のリアルさを追求した演出が目に見張るものがある。
どこか本当の日常よりも日常で、それゆえ大きな心の動きは与えられないかもしれないが、ズキズキと心身の奥底に浸透してくる。カンヌ映画祭受賞というのがうなづける。
エンタメの姿をしながら、しっかりと社会問題を切り裂く強さを持った作品をつくっていくのが、是枝監督の最大の魅力ではないであろうか。
ますます一度高みを超えた監督が、次に目指す世界が楽しみで仕方がない。
始まりからどこか普通じゃない家庭。お母さんが近所にちょっと出てくる...
始まりからどこか普通じゃない家庭。お母さんが近所にちょっと出てくるような気軽さで家出し、長男は兄弟がバラバラにならないよう家計を管理し、幼い兄弟の面倒を見、金策に走るが、置き去りにされた子どもたちだけの生活はやがて経済的にひっ迫し、精神的にも荒廃していく。
母親や、子供の父親であろう男たち、もっと言えばアパートの管理人、コンビニ店員、子どもたちの周囲にいる大人たちの、程度の差はあれど無関心さが一番心をえぐるものがあった。あまりドラマチックに描かない演出がかえって事態の深刻さを際立たせており、見ていてとてもいたたまれなかった。
あたり前のことがあたり前でない。
親と一緒に暮らすこと、友達と遊ぶこと、学校に行くこと、学ぶこと、そんなあたり前のことができない兄弟を描くことによって、そのあたり前のことが当たり前ではなくてとても幸せなことだと気づかせてくれます。
けして楽しい映画ではないけれど、すごくいい映画でした。
子役がみんなすごい上手ですね。
是枝監督のキャスティング力と演出力はさすがです。
芸術的に美しい柳楽少年達
綺麗でエキゾチックな目が素晴らしい。見終わってから色々と考えさせられた。是枝監督はあの母親をどう思っているんだろうか。私は母親の苦悩も理解できる。子供を4人産んだのは理解できないが、何かしら思うところがあったのだろう。子供達の前では胸を張り、長男には特別に接し、長女には女性扱いをし、小さい子達には楽しく可愛がる接し方は、よく子供達を見ているし、立派だと思う。無責任ではあるが、明るい姿しか見せず、負の姿はこの世から無いものとしている。子供が自分たちのやり方で過酷な現実を必死に乗り越え、胸を張り歩く美しいラストが、目に焼き付いている。
と色々勝手に行間を読んで考えてみたが、監督は一番何を言いたかったのか分かりにくいのと、途中少し長いなと感じたので☆4つ。
無関心の恐怖
大人の出演は少なく、主に子供たちだけで進んでいくストーリーが斬新!話が本題に入るまでが長くて、是枝監督好きではなかったら挫折していたかも。
ネグレクトの母親、その子供に対するステレオタイプが剥がれました。私のイメージとは違い、母親からの愛情はちゃんと感じるし、暴言や殴るなどの行為は全くない。子供たちも驚くほど、とてもいい子に育っている。家できちんと勉強をし、家事育児をこなしていて、善悪の区別もある素敵な子供…。
初めは隠れるように生きていた子供たちが、オープンな生活を始めても気にかける人が全くいない事に驚愕。と、同時に主人公の明が付き合う「普通の家の子供」も親からの無関心が感じられました。その親たちからの関心があれば明たちの存在に気づけたかもしれないのに…。
コンビニ店員や隣家はどう思ってたのだろう。実際の状況まで想像が及ばなかったのかな。
無知故に、そんな悲惨な状況になってるなんて想像付かなかったのかもしれない。誰かが何かしてるだろう(だから、自分は何かする必要はない)と思ってたのかも。
この映画に限ってはラストが予想が付かず(王道が通用しない)最後は祈るような気持ちでした。
大衆的には好かれないラストだと思いますが、問題提起として満点で、まさにタイトル通りのラストでした。
【朗らかな笑顔を湛えつつ、育児放棄の自覚ない母親の姿に戦慄した作品】
けい子(YOU)の子供達(最初1人、だがトランクから二人出て来て3人)の長男、明(柳楽優弥:誰もが知っている、今作でのカンヌ国際映画祭最優秀男優賞受賞)の気丈で、健気な姿が忘れられない。
出生届も提出されず、社会的には”存在すら認められていない”3人の子供たちが、いつ帰るか分からない母親を待つ姿。電気も水道も止められた狭いアパートの中で・・。
悲愴な状況を、遠目の固定アングルを多用した(特に、子供たちの公園での洗濯、洗髪シーンが印象的である。)トーンで淡々と描く是枝監督の斬新なカメラワーク及び秀逸な脚本に圧倒された作品。
<”誰もが知っている” 是枝監督が世界にその名を知らしめた記念碑的作品>
<2004年8月9日 劇場にて鑑賞>
この子達を守りたい!救いたい!そんな映画でした
なぜ、観たいと思ったのだろう、あたし、、、。
観たことに後悔もないけど、重い。
切なくて切なくて、、、そんな心になる映画でした。
かなり前に観たので、おぼろげではありますが、今でいう、いわゆる虐待の要素もあるのかもと考えてレビュー入れてます。。。
親として、、、子供を守るのは当たり前だと思っていた。。。でも、今の時代ひっきりなしにニュースでは虐待されて亡くなる子供たちの話題は絶えず、、、今、この時間にも傷つけられている子供がいるのかなとも思ったりする。
生きる為に、幼い子供の奮闘や葛藤、母親との会話の中での笑顔は、心に残っています。悲しい。。。
そして、苦しいんだ、あたし。。。
切なくて切なく、心が痛む。
どんな母でも、子供にとって母親。
消して忘れることのできない映画である。。。
あたしは精神病になり、ひと月は保護室にいたので幼い2人と離れた生活を過ごした。
会いたいとか、ひと月はあまり記憶もないのでただ生きていた、、、?生かされていたというか、、そう思う。
退院出来た時心に誓ったのは、偏見の目が家族に向かないように体調が悪くても、身綺麗にして明るく振る舞うことに専念してきた。友達は全て切った。
子供達、家族を守る為必死になって。。。幸せ。
幸せは 守るべき人がいる事で
自分が生きている証でもあると思う!!
上手く言えなくてごめんなさい。。。
ただ、観れば気付くことがあると思います。。。
それだけ、、、伝えたいことは。
切ない
こんな家庭が目立つようになってきた様に思う。
昔は無理やり関わりを持たされる村社会的なものがあった為、見つけやすかったのかもしれないが、見つけたからと言ってセイフティネットがある訳じゃない。
誰も知らないはそんな世界にいる子どもたちを乾いた目で見せる。
それにしてもYOU演じる母親がぶん殴ってやりたいくらい腹立たしい。
事情はあるのだろうけど、許し難い。
子どもたちの暮らしは危ういが故にこちらの目を惹き付けるが、崩壊の時が訪れると止まらない。
この展開は辛い。
埋葬する流れは幻想的に装っていたがどうにもできない無力感を感じるのがまた辛い。
私自身が当時は仕事で何度も観る機会があり、未だにBGMを聴くだけで苦しくなる。
作品としては魅せられる作品ではないが、子どもの危うさや結末まで淡々と見せる力(演出力)があると思う。
子役の実在感
子役4人と高校生の女の子の実在感がすごかった。家族とは何かというメッセージ性が強く現れていて、「万引き家族」の原点がこの作品にあるように感じた。
YOUが本当に最高で、こういう親いそうだわーって思った。
電話越しに苗字を名乗った瞬間、観ているこっちも何かが崩壊する感覚に陥った。
事実と違うのは仕方ないけど
題材としての実話があるけれど、事実とはあまりにかけ離れておりなんのセンセーショナルも感じなかった。
ゆきちゃんがなくなった経緯もまるで自然死のようだし、母親の仕事や男グセなどもなにも出てこなくて、こんなんでどうして賞を取ったのかまったく理解できない。
闇の子供たちくらいのセンセーショナルな映画にすることが出来るはずなのに。なんてつまらない日本映画
愛はすべてではない
母からの手紙「愛している」…って怒りで言葉も見つからない。この母なりに愛しているのだろうけど、相手の幸せ考えない愛って何?自己満足でしかない。だからくず男しか掴めないんだ。
やりきれないのはそういうのを愛と勘違いしている人がなんと多いことか。子供はその「愛している」にすがるしかない。
子どもから子どもである時間を奪ってはいけない。
本当に心に衝撃を受けると涙も出ない。ただただ、胸の奥、みぞおち辺りがキリキリと傷み、ズシンと重くなる。そして明の、京子の、しげるの、ゆきの顔がリフレインする。
たくさんの「誰も知らない」が描かれ、考えさせられる。
例えば公園の場面。ボロボロの服を着て洗濯している。その向こうでテニスに興じている大人。自分の趣味に集中して子どもの危機に気がつかない。この子らの母と一緒。
紗希の親は何しているの?紗希が明の家に泊まり込んでも放置?
万引きする中学生。親は子の行状知らずに放置。
それに比べれば、万引きの冤罪晴らしてくれたコンビニ店員の顔を見て、多分、裏切っちゃいけないと、やっとできた友人からの誘惑に耐える明。かっこいいよ、明。よく我慢したねと抱きしめたいよ。ちゃんと心が繋がっている。
明達の母は恋に走ったけど、現実にこういう親はいるし、仕事を理由に子供の存在を自分の心から消している親もいる。生命の危機こそないけれど、存在をネグレクトされる子供達、親の都合のいい時だけかまわれる子供達は増えている。
恋をしちゃいけなんじゃない。仕事をしちゃいけないんじゃない。いけないのは子の存在を心から消すこと、子の気持ちを無視すること。
「4人一緒に暮らせなくなる」子供にとっては家族=自分の基盤。引き離されて、未知の世界にたった一人で放り出されるのは怖い。この生活は私達からは悲惨だけど、彼らには馴染んでいる世界。大人から見れば、刹那的で、先の見通しなんて考えられない行為に見えるけど、それ以外の生き方知らないんだもの。それ以外の未来なんて知らないんだもの。
『It』と違って、明達にはお互い思いやって喧嘩して経験を分かち合う兄弟がいた。
その自分の分身と引き離される。その痛みを子供に強いるのか…。
児相に通告して、自分の目の前から消してしまえばそれで終わり・メデタシなんかじゃない。
「リアリティを感じさせない」「深みがなくなっている」という映画レポートを読んだことがあるが、何を持ってリアリティだとしているのだろう?下書きとなった事件と違うから?子供達の生活が楽しそうで、現実感がない、ファンタジーのようだ、だからリアリティがないと?
ネグレクトされた子供、自分を大切にされた経験がなくペットのように扱われた子供と関わったことがある方なら、この映画はそういう子どもたちのリアリティを描き切っていると言うはずだ。被虐待児の心理を多少勉強した人なら、この現状を「解離」「離人感」「スプリット」とかいう言葉で説明するかな?
明達は生まれた時からこの生活で生きてきた。この生活以外は知らない。学校にも行っていないし。TVは観るけど、私達がTVのニュースで戦争を見るようなもので、そちらこそ現実感がない。その限られた生活の中で、楽しみを見つけ笑い、喧嘩し、生きている。その日常生活のリアリティがあふれている。
映画なのだからドラマ化せよ?確かにね。ドラマにならないと注目されない。以前、ある国で虐殺が日常的に行われていることを取材してほしいと報道機関に持ちかけたことがある。その時言われた。「日常的な場面をニュースで流しても誰の目にもとまらない。なにか事件はないですか?」事件にならないと報道はされないし、注目もされない。
この手のネグレクトだって日常ありふれている。でも「誰も知らない」気づかれない。そんな中でもこの子たちは一生懸命生きている。その存在を記録しておきたかったと監督はおっしゃっていたと思う。これは1つのメッセージだと思う。その辺をどうくみ取るかは観る側の感受性の問題なのかな?
音楽もとても良かった。彼らをこの音楽で胸に包み込みたくなる、そんな不思議な感覚。あえてゴンチチさんを起用したセンスに乾杯。
こういう作品を世に出して下さった監督他に感謝します。
YOUさんにも感謝。初女優作品によくぞこの役を選んでくださった。子どもたちと真剣に向き合って、子どもたちが本気でYOUさんと楽しんでいるシーンがあったからこそ、その後の放棄が痛々しかった。
…何ができるのだろう。それを考え続けることが第一歩。
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