「子どもたちのパラダイスと過酷な現実」誰も知らない ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもたちのパラダイスと過酷な現実
世間的には悲惨な事件として認識された巣鴨の子ども置き去り事件。実際にそれは悲惨なものであるのだが、そのレッテルが覆い隠したものにこそ是枝監督は焦点を当てる。
子どもを置き去りにする母親の無責任さを断罪すべきという声が、欧米の観客からもあったという。子どもの人権を考えれば断罪すべきかもしれないが、監督にとって映画は誰かを裁くためのものではない。ここで描かれるのは、子どもたちの幸せだった時間。人間の生活は新聞記事ほどシンプルに切り取れるものではない。残酷な事件だが、されだけで彼らの人生は残酷なものばかりだったわけでもない。
断罪にこだわれば別の真実を見落とすだろう。努めて観察的な監督の視点は社会を見つめる上で重要だ。怒りも忘れてはならないのだが、多面的な視点はもっと重要だ。それが残酷な現実であればなおさらそうだろう。是枝監督の視線のあり方は本当に誠実で貴重なものだと思う。
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When I am 75♥️さんのコメント
2023年1月20日
そもそも、母親の育児放棄だけが、事件の中枢では無いと思います。むしろ、長男とその友人による傷害致死が問題なのではないでしょうか?司法もそのように判断しています。従って、商業主義的映画として取り上げるのはどうかと思いました。
取り上げるならば『子宮に沈める』見たいに過酷な現実として演出するべきだったのではないかと私は感じました。