ナイスの森 The First Contact : 映画評論・批評
2006年3月28日更新
2006年3月25日より渋谷Q-AXシネマにてロードショー
“泣ける映画”に挑戦する“笑える映画”
こんな映画見たことがない……との感想を皆が抱くであろう異色作。そもそも映画はこうあるべきだなどといったルールはどこにもなく、今後も映画は変化していくはずで、そんな意味でこれは一種の“実験映画”なのだ。監督は石井克人など合計3名。多数の細かいエピソード群が、コント集のように次々と語られ、それらがかすかな繋がりを持って一つの宇宙を形成する(昔のテレビ番組「ゲバゲバ90分」に似ていると僕は思った)。
では、これは難しい“実験映画”なのか? 難解といえば難解だが、それはここで展開されるコントが徹底してオチを欠いているからだ。そう、オチのない話を恐れることなく延々と羅列して見せること……そこに本作の野心がある。
モテない男集団と美人OLが合コンに合意しても、実際に彼女たちが集合場所に現われるかといえば、そこにオチはない。それは僕らが知る現実そのものであり、現実にはオチがないのだ。なのに普通の映画は現実にオチがあるかのようにウソをつく。流行の“泣ける映画”なんかそうした“オチ信仰”の産物であり、本作はそれに対決する“笑える映画”だ。むろん全篇笑えるとは限らない。僕も正直4分の1くらい呆然としていたが、少なくとも数回は爆笑を約束されたこの“実験映画”に、あなたはどんな映画の未来を見出すだろう?
(北小路隆志)