NARC ナーク : 映画評論・批評
2003年5月15日更新
2003年5月24日より日比谷スカラ座2ほかにてロードショー
70年代刑事映画風の骨太な演出に酔う
原題“Narc”とは麻薬捜査官、密告者の意味。「ラッシュ」(麻薬の囮捜査官だった)のジェイソン・パトリックと「コップランド」のレイ・リオッタによる、迫真の刑事ドラマだ。舞台は自動車不況の嵐が吹いているデトロイト。麻薬課の潜入捜査官で、民間人を誤って撃ち殺してしまった男と、同僚を殺されたベテラン熱血漢刑事が組んで、謎を残して死んでいった刑事の秘密を探るうち、いくつかの食い違う証言──「羅生門」スタイルだ──にあたりながら真相に迫るというもの。
地味なキャストで、既視感があるありきたりな話だが、サスペンス部分のギミックやプロットなどディテールが緻密で、グイグイと引き込まれる。「フレンチ・コネクション」のポパイ・ドイル、「セルピコ」のフランク・セルピコなどが今に甦ったような、70年代刑事映画風の骨太な演出に酔うのである。ラストの衝撃は「セブン」だろうか。
監督・脚本のジョー・カーナハンの力量に驚いた。この映画の出来を見て製作総指揮に名乗り出たトム・クルーズ(&ポーラ・ワグナー)は、次回作の「ミッション・インポッシブル3」の監督に彼を決めたという! このハイボルテージな映画を見れば、納得だ。
(サトウムツオ)