「曲と映像と世界観は調和、しかし脚本が致命的に後れを取っている」メトロポリス Elvis_Invulさんの映画レビュー(感想・評価)
曲と映像と世界観は調和、しかし脚本が致命的に後れを取っている
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絢爛に輝く摩天楼の下に労働ロボットと貧民の蠢く地下街が広がる階級社会「メトロポリス」で、
己の正体を知らぬまま来訪者ケンイチとともに彷徨う高性能ロボット、ティマの運命を追う物語。
ジャジーな音楽が絢爛さと空虚さを併せ持つメトロポリスの空気を確かに表現しており、
全体のスローテンポも空疎な雰囲気を強く意識させるなど一面では効果的に働いている。
ヒロインティマを「美しく」描写するのはやや演出過剰なところが否めないが、
彼女を取り巻く人間たちの醜悪・愚昧(これを滑稽味として表現できるのは手塚デザインの妙であろう)との対比と捉えればそれも一つのギミックとして好意的に捉えることも出来る。
また、最終盤の「崩壊した」ティマの異形ぶり、それをカメラ視点の妙で状況ごとに印象を変えて見せる技など、映像としては唸らせるものが随所にある。
ただ、それを考慮してもあまりにも脚本の間延び、薄さが擁護しがたく、
演出のスローテンポも相まって映画全体の印象が非常に弛緩したものになっている。
間延びした展開が邪魔してクライマックスに「何を今更チンタラやっているのだ」との感想が沸き起こってしまうのは、この脚本が悲劇である以上は致命的であろう。
自分とは何かの答えを出せないまま、その翻弄されつくした生涯を終えたティマ。
その最期の画が印象的だっただけに、それを納得して受け止められないことが非常に哀しい。
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