「凄い!!!!!!」嫌われ松子の一生 77さんの映画レビュー(感想・評価)
凄い!!!!!!
『仁-JIN-』の野風の熱演が記憶に新しい中谷美紀さん。その中谷さんが「この役をやるために女優をやってきた」とも「撮影がきつすぎて女優を辞めようかと思った」とも言っていたりだとか、脇を固めてる俳優さんもビジュアルが好きだったり演技が好きだったりキャラクターが好きだったり気になる人ばっかり出演されてて、最近になって観たい観たい病にかかった作品w
ホントに観てよかった!制作に関わった人全員に拍手を贈りたくなるような作品でした。妥協や手抜きが一瞬も見当たらない力強さを感じる映画です。
中島監督は『下妻』も『パコ』も『告白』もすごく良かった(『告白』は系統が違うけど)ので期待はしてましたが、期待以上。
この監督さんの映像美は見てるだけで本当に楽しい。今作もつかみからいい感じですぐ見入ってしまって、最後のEDのメドレーまでずっと釘付けでした。叶わない夢だけど中島監督が撮ったディズニーの実写とか観たいなあ。。
画が映画映画してるというか骨や皮まで美味しく頂ける感じが大好きで。その分撮影が本当に大変だけど、ここまでしてくれると観客冥利に尽きるし、役者冥利にもそして監督冥利にも尽きると思います。そんな全力がこちらにも届いて心から「いいものを観た!」と思わせてくれます。
語り手の切り替え方も凄く心地好くて、時間が経てば経つほどあ〜終わってほしくないなあと思っていました。
ただ原作は未読なのですがWikiの【原作との違い】を見ると変えない方が良かったのに〜ってことも結構あったので原作も読んでみたくなりました。
そしてなんといっても中谷さん。
キーポイントになっている“変顔”ですが(柄本さんの表情素敵すぎ)、中谷美紀のあんな顔初めて見た!wと驚いてるのもつかの間、本当に本当に女優魂を感じさせてくれました。
まずどんな髪型もメイクも服も似合ってしまうというか自分のものにしてしまってるのが凄い。ダッッサい時wもやっぱり綺麗で。でも“嫌われ松子”時代(晩年になってからのあだ名だったのは意外でした)は特殊メイクもさることながら動きまで中谷美紀って信じられないくらいの怪演!
上記の発言の理由がダイレクトに伝わってくる、本当に心と体を削っただろう素晴らしい演技でした。
中谷さんだけじゃなく、大好きな人から気になる人からノーマークだった人までこの役はこの人じゃないとダメ!!って配役ばっかり。
全部見終わって思い返してみるとクドカンさんが特に印象的だったなあ(皆さん良すぎていちいち書いてたらきりがないのでw)。本当に殴る蹴るしてそうなリアルさと最後の笑顔が忘れられません。
ここから更に内容についてネタバレしまくりますw
そこは重要ではないものの松子が誰に殺されたかはやっぱりずっと気になってたんですが、見ず知らずの中学生だったとは…“松子”の人生の結末としては全然意外ではないんだけどなんか「…」を入れたい余韻が残りました。
松子の一生は中学生の出来心を機に変わり(自業自得な面も大いにあるけど)中学生の手で終わるとは皮肉めいてて切ないです。
ただいまとおかえりを言い合えるような人が1人でもいたらそれは凄く素晴らしいことなんですよね。松子にも家族やめぐみ(友情には思わず涙)や洋一がいたのに、生きてる間はそれぞれの「愛してる」「愛されたい」のすれ違いによってなかなか気付けない。虚無感、孤独感、防衛本能なんかが色んなものを見えなくする。人と人、生きていくことって複雑です。
ちょっと余談ですが松子を見て改めてやっぱり幼少期の家族からの愛情ってその後の人格に大きく影響するなあと思いました。
お話の中の人だけど決して特別じゃなく、愛されてない、寂しいと感じてると大人になってから異性関係が荒れる人って多い気がします。人生を決めるのはもちろん自分の責任ですが。
「時代遅れでも生きてかなきゃならない」
「それでも私の体は生きようとしていました」
なんかズドンとくる本質ですよね。
松子の人生は何回も“終わった”けれど、松子に限らず不公平な世の中でも皆“人生は一度でたくさん”なことは平等に与えられてて、人生は悪いもんじゃない。
今日すれ違った誰かのこれまでのドラマを感じさせてくれるような物語でした。