「不幸過ぎるが重くない」嫌われ松子の一生 プライアさんの映画レビュー(感想・評価)
不幸過ぎるが重くない
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ある青年が叔母が存在していたことと、最近死んだということを知る。
興味がわいて叔母・松子のことを知ってる人達の話聞き、その人生を追う。
松子は教師だったが、盗みを働いた生徒に濡れ衣を着せられる。
これにより教師をクビになり、ここから転落人生が始まる。
とにかく男運がないというか、きっと駄目な男が好きなのだろう。
何度も裏切られるわ、殴られるわ、ある日感情的になって恋人を殺してしまう。
で服役先で唯一の友人と言える女(後にAV女優)と出会う。
出所後、美容師をしたり風俗で働いて生計を立てるも、やはり男運がない。
昔自分に濡れ衣を着せた生徒(今はヤクザ)と再会し、恋仲になる。
でもこれがまたクズでしょっちゅう暴力を振るわれる。
前述の友人が助けに来てくれるが、松子はクズ男を選ぶ。
その後このクズ男は何か不義理をやってヤクザから狙われるようになる。
松子と共に潜伏していた旅館はすぐにバレ、警察に保護してもらった。
男は刑務所に行き、松子は出所を健気に待ち続け、当日迎えに行く。
が、誰からも愛されたことのないクズ男はどうして良いかわからなくなり逃走。
やがて人生の目的を失ってブクブク太った松子は偶然友人と再会する。
友人は美容院を経営して成功しており、雇ってやると言ってくれる。
が、松子は自分の無様な姿を見られたくなく、逃げるようにして帰る。
家に帰った松子は再考し、改めて美容師としてやり直そうと決意する。
が、感情的になって名刺を河原に捨ててしまっていたのを思い出した。
深夜にも関わらずそれを探しに行き、見つかった。
が、ここで頭の悪い中学生達に注意した事を逆恨みされ、殺された。
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なかなかショッキングな映画。
どこまで不幸が続くねんとしか言いようがない。
でも最初の濡れ衣は運が悪かったとして、それ以降は松子自身の弱さによるもの。
とにかく駄目な男が好きな奴っておるんよなあ。
また寂しくて仕方がなかったのだろう。
殴られようが、裏切られようが、1人よりはマシって独り言を言ってた。
実に健気である。おれがこいつを守ってやりたいと思ってしまう。
でも現実には無理なのだろう、だってコイツは駄目な男が好きなだけなのだから。
普通に生活力のある平凡な男じゃ、退屈して松子の方から去って行くのだろう。
それにしても中谷美紀はまさしくハマり役だったと思う。
その体当たりの演技に好感が持てた。
この人、普通の女優なら敬遠しがちな恥ずかしい役でも受ける。
柴崎コウなんかもそうやが、そのプロ根性には頭が下がる。
基本的に悲劇なんやが、コメディタッチな部分もあってそんなに重くない。
また風俗・殺人といった重苦しいはずのキャラにも関わらず、
共感することが出来るし、可愛らしくさえ感じる。
それは彼女の生き方に嘘がないからなのだろう。
アホやし愚かやけど、人間的には間違えているとは思わない。
普通にサラリーマンやOLとして小器用に生きるのが正しいってわけではない。
不器用ではあるが真実の人である。社会はこのような人にとっては生きにくい。
神になぞらえるシーンがあったが、わかるような気がした。