間宮兄弟 : 映画評論・批評
2006年5月9日更新
2006年5月13日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー
オタクたちに明るい希望を抱かせる、もう一つの「電車男」物語
「家族ゲーム」や「阿修羅のごとく」しかり。森田芳光監督は何気ない日常風景から人間の愚かさや悲しみ、愛おしさを描くのが巧い。前作「海猫」はしょっぱかったが(苦笑)、江國香織原作の同名小説「間宮兄弟」は森田テイストに見事にマッチ。共に横浜ベイスターズ・ファンである事に代表されるように、流行とか、他人の嗜好に流されることなく己の趣味&生活を貫く三十路独身男・間宮兄弟の生態をほのぼのと、そしてコミカルに描く。
さしたる大事件は起こらないが、メインは間宮兄弟の彼女ゲット大作戦! くどいようだがベイスターズ・ファンだし、弟・徹信は飛行機の模型を造るのが趣味で、新幹線に乗ればうんちくを語りまくると、いわゆるオタク。日常生活に不満はないが、やっぱり愛が欲しい!と、気になる女性(沢尻エリカと常磐貴子)を自宅に招くのだが、彼女たちも引いてしまうことなく、次第に間宮兄弟ならではの“味”を噛み締めていくところがミソ。オタクたちに明るい希望を抱かせる、もう一つの「電車男」物語だ。
仲良し兄弟を演じる佐々木蔵之介、「ドランクドラゴン」塚ちゃんをはじめ、キャスティングがフレッシュ。せっかくの邦画隆盛期。製作者の皆さん、こうした大博打を楽しみにしております。
(中山治美)