マルコヴィッチの穴 : 特集
タワシ頭のキャメロン・ディアス
(編集部)
キャメロン・ディアス。1972年、サンディエゴ生まれの27歳。デビュー作「マスク」(94)で、ジム・キャリー演じる小心者の銀行員が夢中になるクラブ歌手、ティナを演じ一躍脚光を浴びた。そしてその人気は、エッチなコメディ「メリーに首ったけ」(98)で爆発する。ファレリー兄弟ならではのお下劣で過激な笑いをさわやかに体現した彼女は、映画の中のメリーよろしく全世界の男心をくすぐり、一気にトップ・スターの座へ躍り出たのである。最近では、オリバー・ストーン監督の「エニイ・ギブン・サンデー」(99)で、ギラギラした野心を抱えてアル・パチーノと火花を散らす強気な女、クリスティーナを演じ、新境地を開いたことも記憶に新しい。
順風満帆な女優人生。健康的な輝きを放つパーフェクト・ボディに愛くるしい美貌がその一端を担っていることは間違いない。そんな時に、この「マルコヴィッチの穴」である。彼女が扮するのは、人形使いクレイグ(ジョン・キューザック)の妻。勤め先であるペットショップの動物たちを自宅に連れ込み、毎日チンパンジーやオウムの世話に明け暮れる風変わりな女性だ。この役のポイントは“ブス”であること。火事にでもあったかのようなメイク。髪の毛はボサボサで、まるでタワシ。口はいつも半開きで、色気のかけらもない。映画が始まってしばらくたってから、ようやくこの女性がキャメロンであることに気づく人も多いはず。
今やジュリア・ロバーツやメグ・ライアンと並ぶほどの人気と実力を兼ね備えているにも関わらず、自ら“ブス役”へと身を投じたキャメロン。これまで「セクシー」「美人」と称されるハリウッド女優のなかで、彼女ほどなりふりかまわずキャリアを重ねてきた女優はいないだろう。あらゆるインタビューの中で、「セクシーさだけが売りの、お人形のような女優にはなりたくない」と公言しているキャメロンだが、この「マルコヴィッチの穴」では、まさにそれを証明している。彼女のファンには気の毒なほどに。