「激しい空爆と爆破シーンが生々しく臨場感たっぷり・・・一瞬、聴覚を失ったような感覚に陥り、観客は塹壕の中に隠れている兵士のように凍りついた。」ロング・エンゲージメント kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
激しい空爆と爆破シーンが生々しく臨場感たっぷり・・・一瞬、聴覚を失ったような感覚に陥り、観客は塹壕の中に隠れている兵士のように凍りついた。
戦争の悲惨さ、空襲を受け爆撃されるだけではなく、味方の軍の中にも悪魔が潜んでいるという異様な重苦しさをも表現している。映像は、塹壕の中、軍法会議で死罪の判決を受けた5人の兵士が連行され、ドイツ軍と対峙する中間点へ置き去りにされるところから始まった。彼らは皆、自分の手を撃ち抜いて兵役を逃れようとしたのだ・・・
人物紹介がスピーディーに展開されるので、公式サイトで予習しておいた方が無難だと思います。『アメリ』のオドレイ・トトゥ演ずるマチルダが待ち焦がれる恋人マネクもその5人の一人。自分の指を撃ち落すシーンで度肝を抜かれます。「貧乏人が大砲を作り、金持ちが売る。そして貧乏人が死ぬ」とアジテートするシ・スー、復讐に燃える娼婦のヒモであるアンジュ、伏線となるバストゥーシュ、重要人物であるノートルダム、と覚えておきたいところです(と、公式サイトで確認)。
ストーリーは、戦争映画とマチルダ、マネクのロマンス映画をベースに、“マネクの最期を見届けた人物”を探すため私立探偵を雇って調査をするという不思議な物語。マチルダの恋人を愛するがゆえの直感が謎の深部に突き進んでいく。列車に乗っているマチルダは「7つ数える間にトンネルに入るか、車掌が来るかすれば、マネクは生きている!」などとつぶやいたり、M・M・Mという暗号を基に恋人同士にしかわからない秘密を探っていったりと『アメリ』にも通ずる新感覚のエッセンスを発揮している。そして、笑いの要素、マチルダの実家に郵便配達人が何度も登場し、その度に笑える空間を設けてあるのです。こうやって眺めると、かなり詰め込み過ぎの感を否定できなくて、めまぐるしい展開に取り残されそうになるのが難点でした。
登場人物がかなり多いと一人一人の描写が疎かになりがちなのに、絶妙なバランスで素晴らしい演技で惹きつけてくれます。特にティナ役のマリオン・コティヤール(『TAXI』シリーズ)が良かったし、意外な女優、ジョディ・フォスターも良かったです。彼女が脇の下をタオルで拭くという何気ない演技にノックアウト・・・後にマリオン・コティヤールが賞レースで突っ走るなんて夢にも思わなかった2005年の鑑賞だった。
【2005年3月映画館にて】