ロング・エンゲージメント : 映画評論・批評
2005年3月1日更新
2005年3月12日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にてロードショー
「アメリ」コンビの新作は謎解きの面白さを求めても肩すかし
ジャン=ピエール・ジュネとオドレイ・トトゥの「アメリ」コンビが3年ぶりに再びタッグを組んだ本作は、「アメリ」+「プライベート・ライアン」ともいうべき、愛と戦争のスペクタクル。原作は「雨の訪問者」の脚本家としても知られるミステリー作家、セバスチャン・ジャプリゾの「長い日曜日」。映画化はジュネの13年来の夢だったという。
でも、この映画にミステリーの謎解きの面白さを求めても肩すかしだ。ヒロインのマチルダは婚約者の戦死を知らされても“不思議な愛の直感”で必ず生きていると信じ、彼を探す壮大な旅に出る。基本が直感なのだから、いくら手掛かりを握る人物の証言やデータが膨大に出てきても観客には推理不能。ここは、映像の魔術師ジュネの圧巻の美学に身をゆだね、セピア調のワイド画面を堪能するしかない。
結果、思い込み系の女の子がどこまでも彼氏を追いかけるという構造は「アメリ」と変わりないと気づくわけだが、パリのおしゃれな街角に反応した女子たちが壮絶な戦闘シーンをどう受けとめるか。ファンタジーとリアリティの狭間に残るのはヒロインの愛、それも彼氏に対するより自分の直感に対する……といったら夢がなさすぎでしょうか。
(田畑裕美)