「【”踊っていると良い気分です。踊り出すと何もかも忘れて。とビリーは審査員達の前で言った。”今作は不況の炭坑町で生きる少年がバレエと出会い、当初反対していた父や兄の支援の下、表舞台へ旅立つ物語である。】」リトル・ダンサー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”踊っていると良い気分です。踊り出すと何もかも忘れて。とビリーは審査員達の前で言った。”今作は不況の炭坑町で生きる少年がバレエと出会い、当初反対していた父や兄の支援の下、表舞台へ旅立つ物語である。】
ー イギリスの寂れた炭鉱の町を舞台にした映画と言えば「ブラス!」「パレードヘようこそ」を思い出すが、どちらも逸品である。
そして、今作もそれに並ぶ逸品だと、鑑賞後に思った作品となった。ー
■イギリスの炭坑町で暮らす11歳のビリー(ジェイミー・ベル)。
炭坑府である父ジャッキー(ゲイリー・ルイス)の指示で嫌々ボクシングを習っていた彼は、隣の会場で偶然見かけたクラシックバレエに魅了される。
父の大反対を受けるも、ビリーは女子に混じって練習に没頭する。その上達ぶりを見て、バレエ教室の先生ウィルキンソン(ジュリー・ウォルターズ)は”ロイヤルバレエ学校”のオーディションを受けさせようとする。
◆感想
・ビリーがバレエを行う事に反対していた、炭鉱夫の父と兄のトニーが、考えを変えていく過程が心に沁みる。
ビリーがボクシング場で、父の前でバレエを踊るシーン。父はその姿を“止めろ!”とも言わず、じっと見ているのである。そして、その後、兄のトニーに”俺たちには、未来はない。だが、ビリーには未来があるんだ!”と言って、賃上げの為のストを止め、鉱山へのバスに乗り込むシーンである。
■冒頭に出るが、今作の舞台設定は1984年である。イギリスが不況に喘いでいた時期である。故に、父もビリーもストライキに参加している。
シーンに被せて流れる音楽も、ブリティッシュロックの名曲揃いである。T-レックスの「Bang a Gong」ストの光景に併せて流れるザ・クラッシュの「London Calling」スタイル・カウンシルの「Shout to the Top」などの使い方もバッチリである。
序でに、観ていて個人的に、非常に盛り上がった事も記しておきたい。映画に置いて、音楽って大切だよなあ。
・この映画では、心に沁みるシーンが、怒涛の如く描かれる。ビリーの親友であるゲイの資質を持つマイケルが、ビリーが踊る姿を憧れの眼で見ているシーン。
・そして、ビリーの父がビリーを連れて”ロイヤルバレエ学校”のオーディションに臨むシーン。ビリーは審査員の前で踊った後に、満足出来る踊りではなかったのか、同じくオーディションに来ていた少年を弾みで殴ってしまうのである。
その後の面接のシーンでの、”踊っている時は何を考えているの?”という女性審査員の言葉に、部屋を出かけていたビリーが振り返って言った言葉が、実に良い。
”踊っていると良い気分です。最初は身体が固いけれども踊り出すと何もかも忘れて、全てが消えます。自分が変わって・・、宙を飛んでいる気分になります。鳥のように、電気のように。”
その言葉を聞いて、審査員たちの表情が明らかに変わるのである。
<そして、時は経ち、父と兄は大劇場でマイケルと共にビリー(ナント!アダム・クーパーが踊っている!)が「白鳥の湖」を高い飛翔で踊る姿を見ているシーンで、画はストップする。見事なるラストであると思う。
今作は、貧しき炭鉱の町で育った少年が、自分の好きなバレエに出会い、最初は反対していた父、兄も彼を応援するようになり、成長する様を描いた逸品なのである。>
いま映画館から戻ったところです。
NOBUさん、これ本当にいい映画ですねぇ。
やるせなさと、割り切れなさをすくい上げるイギリス映画。家庭で、職場で、子育てで。
監督の歴代の作品名を見れば、このひとは鉄人だと思わされます。